霧島もとみです。
僕が19歳・大学1年生のとき、予備校に通っていた女友達のKさんから進路についての相談を受けました。
・第一志望の国公立薬学部には不合格だった。
・国立の工学部と、私立の薬学部に合格した。
・親に負担はかけられないので、二浪は選択できない。
・私立の薬学部は学費が高くて親に大きな負担をかけるので躊躇している。
・国立の工学部に進むことも考えている。
・僕が工学部に進んだ経験を踏まえて、どうするのがいいか意見を聞かせて欲しい。
僕はこの相談に対して、満足な答えを伝えることができませんでした。
ひとりよがりな考えで、何の参考にもならない答えを提示してしまったのです。
このときのことを急に思い出しました。
思いは叶いませんが、今だから分かる、彼女の進路相談に応える唯一の正解を書きます。
今だから分かる進路相談への答え
女友達からの相談への正解
最初に答えを書いてしまいます。
進路相談をしてくれた彼女への正解は、次のとおりです。
「Kさんは薬学部が志望だよね?
僕は私立の薬学部へ行ったほうがいいと思う。
確かに親に経済的な負担はかけるかもしれないけど、子供が進みたい道へ行くのならきっと応援してくれると思う。
その負担が大きすぎるのなら奨学金っていう選択肢もある。
本気で薬学部に行きたいのかどうかをもう一度考えて、それでも思いが変わらないことを確かめたら、親と相談してみたらどうだろうか」
なぜこれが正解なのか?
なぜこの答えが正解かというと、結果として彼女は私学の薬学部へ進学したからです。
その事を、今の僕が知っているからです。
結果として彼女は薬学部を選択するのだから、相談に対する正解は、薬学部へ行きたい彼女の考えを感じ取ってその背中を押してやることが答えだったんですね。
もし結果が違って、工学部に進学していたとしたら、正解は「工学部に行くべきだよ」に変わります。
これは少し乱暴な理屈かもしれません。
でもそうやって考えるしかないというのが、事実でもあります。
なぜなら、この相談には一般論としての正解がないからです。
結果から導かない場合の正解は?
結果を知らない状態でこの相談に応えるとしたら、正解は変わってきます。
だから、19歳の僕が答えるべきだった正解は次のとおりです。
「それは僕にも分からない。
もし良かったら、何がネックになって悩んでいるのか、もう少し詳しく聞かせて欲しい。
何かアドバイスできることがあるかもしれないから」
そして肝心なことですが、ここから先は、具体的に「こうする方がいいと思う」ということは絶対に言わないのが正解です。
これが出来ていれば・・・と今でも悔やみます。
では、実際に19歳の僕はどう答えたのかを見てみましょう。
19歳の僕が出した相談への答え
19歳の僕は彼女にこう答えた
僕が実際に答えたことは次のことでした。
「工学部に行くってこともアリだと思う。
工学部は工学部で、結構面白いところだよ。
今は薬学部が第一志望かもしれないけど、工学部に行ったら行ったで面白いことはたくさんあるから、選択肢として間違っていることは無いと思う」
細かい部分は記憶から抜けてしまったのですが、概要はこんなことでした。
僕が後押ししようとしたことは「工学部の選択への不安の払拭」だったんですが、結果からいうと、これは全くの的外れなアドバイスだった訳です。
19歳の僕はなぜそう考えたのか?
当時の僕は、僕なりに考えたつもりでした。
中学校からの同級生の相談だから、僕の経験を踏まえて真剣に考えないといけない、そう思って答えを出そうとしていました。
僕が「これが答えだ!」と考えた理由は次の3点でした。
- 親に負担をかけたくないという思いが強いと思った。
彼女に対する僕のイメージは「真面目で優しい人」というものでした。
だから自分の親に負担をかけたくないという思いが優先しているんだろうなと考えてしまいました。
先入観による判断をしてしまった訳です。
- 自分がそもそも進路を真剣に考えたことがなかった。
相談をもちかけられた僕ですが、自分自身がそもそも大学の進路を真剣に考えたことがありませんでした。
文系か理系かぐらいは考えていましたが、あとは偏差値を見て行けそうなところを受けた感じでした。
「東大と京大は無理で、東京工業大学くらいかな。滑り止めは得意科目だけで受けられる東北大にしよう…」
だから相談に対しても「進路なんて適当でいいじゃん」と漠然と考えていました。
そもそも何が重要かを分かっていなかったんですね。
- 自分の経験・価値判断を求められていると考えていた。
予備校に通っていた彼女と比べると、僕は約1年間の大学・工学部での経験値がありました。
だから先行者である僕の経験を元にした価値判断が求められていると考えて、その結果「工学部もいいところ」という回答を考え出してしまいました。
僕の回答が間違いだった理由
そもそも彼女の結論は最初からほぼ決まっていたと考えられます。
女性に限りませんが、相談をしたり意見を求める場合には、本人の中では無意識下で既に結論が出ていることが多いんですね。
ただ、自分だけの考えで決めることには「間違ってしまうかもしれない」という不安があります。
そこで自分の選択を補強するための材料を求めて、誰かに相談をする訳です。
買い物でのこんなケースに経験がないでしょうか?
「AとB、どっちが似合うと思う?」
「Bかな。◯◯で△△だから、Bの方が似合うと思うよ」
「えー、そうかな?でも私はやっぱりAがいいな。Aを買うね」
この場合、相談者がもっとも必要としていることは、自分が無意識下で決めているAという答えを誰か別の人の口から言ってもらうというという事なんですね。
だからそれに沿わない答えは普通にスルーされます。
会話は噛み合わず、場合によっては「この人に相談するんじゃなかった」という負の印象を持たれることもあります。
つまり、相手の意図を読み取ろうとせず、迂闊にも自分の経験や価値判断で答えを出そうとしてしまったことが、そもそもの間違いだったということです。
19歳の僕はどうしたら正解にたどり着くことが出来たのか
最後に「どうしたら19歳の僕が正解にたどり着くことが出来たのか」ということをまとめておきます。
まず第一に、相談者の話をよく聴くことです。
いわゆる「傾聴」と呼ばれる行動を取ることですね。
話を途中で遮ったり、自分自身の解釈を押し付けたり、相手を自分の意見に沿わせようとしては駄目です。
第二に、相談の目的が何なのかをよく見極めることです。
相談の目的は第三者に結論を出してもらうことではなく、問題点を明確化したり、精神的な支えを得て感情的な問題を解決したりすることだからです。
必要としているのが情報なのか、分析なのか、気持ちへの理解なのかを見極めることが必要です。
そして注意しておくべきことが3点あります。
- 本当の意味で「正解」は無いことを認識しておくこと。
進路の相談で気を付けないといけないのは、その選択が正解なのかどうかは、結局のところ本人にしか分からないという事です。
選択を行うための優先順位や価値観は本人にしか分かりませんし、結果的にその選択が本人の人生にどう影響するかなんて誰にも分かりません。
- 自分の価値観や経験から判断しすぎないこと
自分の価値観や経験からの判断を正論として伝えた場合、「自分のことを分かってもらえなかった」という負の印象を与える可能性があります。
相談をきっかけに関係性が悪化してしまったら、相談され損です。
また、客観性に欠けてしまう可能性も高いので、やはり避けないといけないことです。
- 安易にアドバイスや判断をしないこと
進路の相談に正解がないことは先に書いたとおりです。
このことを踏まえると、安易に結論付けてアドバイスや判断を行うことは、とても危険です。
そもそも他人の人生に責任を持つことなんて出来ません。
意見を言う場合は判断材料の提供程度にとどめて、本人に考えてもらうのが良い形です。
まとめ
以上を踏まえると、19歳の時に受けた進路の相談に対して、僕が答えるべきだった唯一の正解は次のとおりです。
「それは僕にも分からない。
もし良かったら、何がネックになって悩んでいるのか、もう少し詳しく聞かせて欲しい。
何かアドバイスできることがあるかもしれないから」
こうして話を聞いているうちに、きっと彼女は自分の中で考えを整理することができ、自信を持って選択を行う事ができるようになったでしょう。
少なくとも、その助けになることは出来たでしょう。
19歳の僕にこのことを伝えることはもう叶いませんが、これから僕が何かの相談を受ける事があった時には、この記事の内容を忘れずに対応したいと思います。