【書評】「破天荒フェニックス」心を揺さぶられる冒険の一冊。その感動はまるでキングダム。

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霧島もとみです。

今日は、田中修治さんの著書「破天荒フェニックス」をご紹介します。

破天荒フェニックスの表紙

この本はビジネスエンターテイメント小説という位置づけで、どちらかというと「ビジネス書」に分類される本です。

でもですね。

僕は泣きました。

思わず涙を流してしまうほど感情移入し、心を強く揺さぶられました。

こんなビジネス書にはまだ数えるほどしか出会ったことがありません。

長編漫画「キングダム」をも超えるような感動を覚えました。

 

それでは本の紹介と、どうしても伝えたい僕の3つの感想をお届けします。

「破天荒フェニックス」はどんな本?

「破天荒フェニックス」は、株式会社オンデーズ代表取締役社長・田中修治さんが主人公のビジネス小説です。

債務超過に陥っていた低価格メガネチェーン「オンデーズ」を買収し、再生に乗り出した自分自身の物語をベースに書いたものです。

「この作品はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません」とは書かれていますが、おそらくは限りなく事実に近いものでしょう。

 

さて、いわゆる「ビジネス書」に分類されるこの本は、その予想を完全に裏切り、読む人の心を大きく揺さぶる情熱的な物語でした。

 

債務超過の会社を抱えたことで、繰り返し訪れる資金ショートの危機。

資金提供者や銀行の相次ぐ手のひら返し。

裏切りや競争、失敗と成功。

 

生き馬の目を抜くようなビジネスの世界で、余裕なんて微塵もないなか、田中さんはギリギリを追い求めるかのように挑戦し続けます

そして、破綻の淵で成功を掴み取り、鮮やかに甦えるその姿は「破天荒フェニックス」のあだ名にふさわしい生き様でした。

 

逆境を何度も一緒に乗り越えた仲間や、協力者との絆の存在は、忘れられない感動を与えてくれました。

一人の経営者の身を焼き尽くすような挑戦心と、その炎に魅せられた仲間たちが駆け抜けていく冒険で、間違いなく、読む人の心を熱く揺さぶるでしょう

 

それでは次に、破天荒フェニックスでどうしてもお伝えしたい3つの感想について書いていきます。

1.経営者の生き様・ドラマに涙する

「破天荒フェニックス」というタイトルは、田中社長のあだ名だそうですが、本の物語を的確に表しているタイトルだと感じました。

破天荒とは、田中さんの生き様そのもの。

「ワクワクする」「チャンスを掴みたい」「オンデーズを世界一にする」という情熱が身体を突き動かし、前へ前へと突き進んでいきます。

 

物語の最初の時点で田中さんは30歳。
デザイン企画会社の経営者ではあるものの、メガネについてはド素人

その人が「20億の売上しかないのに14億の負債を抱えているメガネチェーンを買収する」という時点で「破天荒」というのに十分ですが、読み進めていくと、これは単なる始まりでしかなかったことを痛感します。

もう、怒涛のピンチの連続です。

書いていくとキリがないので、箇条書きで幾つかを紹介します。

  • 繰り返し繰り返し、何度も訪れる資金ショートの危機
  • 資金ショートの規模の拡大
  • 資金提供者、提携先、銀行の手のひら返し
  • 裏切り行為
  • 勝負をかけた挑戦の失敗
  • 強力な先行者との競争

こうやって並べるだけでも頭が重くなりそうです。

しかし決して挑戦を諦めず、心を折らず、目指す場所へ向かうために戦い続ける田中さんの姿に、経営者の熱い生き様を感じました。

ちなみに「資金ショート」が何かを知っておくと、この物語の恐怖度がより強烈になるので、ごく簡単な解説を添えておきます。

資金ショートとは?
支払い期限が到来した債権を払うための資金が枯渇する状態のこと。
長期的には黒字が見込めていても、支払うための資金が瞬間的に枯渇すると企業経営は破綻します。

戦国時代の合戦を例にすると、大兵力があり将来的には勝つ見込みがあったとしても、短期的に兵糧切れを起こしてしまうと餓死して負けるという感じです。

さて、破天荒というと何かカッコいい言葉の響きがあると思います。

でも、この物語はそんなカッコいいものじゃありませんでした。

ドロドロです。

生き馬の目を抜く、人の欲と情念が渦巻いたビジネスの世界をまざまざと見せつけてきます。

中でもファンファンという雑貨屋の買収・再生に関するエピソードは、完全に感情移入していた僕の心臓を強烈に圧迫しました。

悔しさ、不安、恐怖がべっとりとへばり付いてくるようでした。

その凄まじさを表す一節があります。

人間は同時に複数の顔を持つことができる。この世の中には、自分個人の目的達成の為なら、己の考える正義だけを基準に、人の人生を平気で踏み台にして謀略を巡らそうとする人がいる。

この一節を田中さんに書かせるに至った経緯に、僕は心の底から戦慄を覚えました

 

それにしても、とにかく壮絶なストーリーでした。

でもそれ以上に忘れられないのは、ピンチを共に乗り越えてきた仲間との絆、協力者の支援、チャンスを掴んだ成功体験です。

奥野さんをはじめとする、志に共感したオンデーズの社員たち。
経営者としての行動を評価してくれた支援者。
失敗したら終わりという土壇場で掴んだ大成功。
商品が、ビジネスモデルが受け入れられた感動。

このどれもが、本を読んだだけの僕にとっても忘れられない記憶となり、涙を流すほどに心を動かされる理由になりました。

2.漫画「キングダム」のような感動!まさに戦場の物語。

「破天荒フェニックス」を読んでいて、この感動はどこかで感じたものと似ている…と思ったのが漫画「キングダム」でした。

キングダム24巻表紙「キングダム」24巻・表紙

※キングダムを読んでいない方すみません。よかったらもう少しお付き合いください。

迫力ある戦闘。
「中華統一」という遥かな夢を追いかける王。
王の信念に夢を見て共に戦う仲間。
強大な敵。
仲間の裏切り。

次々と訪れる危機的な状況のなかで、間一髪のところで勝利を掴む展開。

成長する王と仲間たち。

 

これらは、僕がキングダムの面白さの中心だと思っている要素です。

そしてこれらの全部を、破天荒フェニックスの物語の中に感じました。

 

第20話「快進撃の最中に訪れたピンチ」では、オンデーズは過去最大のピンチに陥ります。

確実に経営破綻、または会社ごと身売りしなければいけない状態です。

完全に感情移入してしまっていた僕は、この圧倒的な危機の前には、ただ飲まれていくしかないのか…と全てを諦めて呆然とするしかありませんでした。

どれくらい絶望していたかというと、

合従軍に攻められた秦の気持ちです。

合従軍に恐怖する秦の王・政合従軍に恐怖する秦王・政(「キングダム」24巻)

いや、攻められただけじゃないですね。

最後の砦になった蕞に籠城し、決死の抵抗を試みるも西の門を破られたときの

「蕞が、落ちてしもうた…」

に込められた絶望です。

国が滅びる、その瞬間が訪れたという絶望です。

絶望する兵士国の滅びに絶望する兵士(「キングダム」32巻)

しかし国は滅びませんでした。

破られた西の門の向こう、崖の上に同盟を結んでいた山の民の大軍が姿を現したからです。

絶対的な危機を救った援軍・山の民絶対的な危機を救った援軍・山の民(「キングダム」32巻)

そしてオンデーズも破綻しませんでした。

田中さんの経営者としての力を評価していた藤田光学の藤田社長が、資金援助を申し出てくれたからです。

散々手のひら返しをされてきた中で突然現れた取引先の社長が、経営者としてこれまで自分(田中さん。感情移入しすぎました)がやってきたことを評価してくれ、莫大な資金を惜しげもなく援助してくれる。

会社だけでなく、自分自身の存在も救われたような感情が一気にほとばしり、僕は泣いていました

このほかにもたくさんのドラマがあります。

経済戦争とも言える物語は、キングダムよりも面白いとさえ思えるものでした。

3.紹介文の問いかけ「企業とは。働くとは。仲間とは」の答え

この本の紹介文の中に、次のフレーズがあります。

僕は、「絶対に倒産する」と言われたオンデーズの社長になった。
企業とは、働くとは、仲間とはーー。実話をもとにした傑作ビジネスエンターテイメント小説。

読む前は、なんてことはない文章だと気には留めませんでした。

しかし本を読んだ後、このフレーズをもう一度目にした時、

「答えは見つかったかい?企業とは何なのか。働くとは、仲間とはーー」

と問いかけられたような気がしてきました。

 

もしこれが著者からの問いかけだとすれば、面白い本を読んだならば、その問いに答えるのが読者としての礼儀です。

この本で得た答えを書いておきます。

企業とは。

目標や夢を持ち、リスクを引き受けて挑戦すること。

働くとは。

仕事を通じて、素晴らしい世界を提供すること。
経営者の熱意を受け止めて、果たすべき仕事をやりきること。

仲間とは。

この問いを答えようとした時、物語の中の様々なエピソードが浮かんできました。

仲間という存在を一言に概念化して表すのはどうしても難しい。
物語の前に霞んでしまうんですね。

そこでこの問いかけには、本文からの引用を答えにします。

これまでの7年間の航海で、僕が手にした一番の武器は、どんな船でも逞しく乗りこなし、荒波を越える勇気と努力を持った沢山の仲間たちだ。

 

 

以上が「破天荒フェニックス」の紹介です。

僕が味わった感動の一部でもお伝えすることができればと思って書きました。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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