【書評】「経済で読み解く日本史〜明治時代」金本位制の罠とは?

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こんにちは、霧島もとみです。

上念司さんの「経済で読み解く日本史〜明治時代」を読んだ感想を紹介させていただきます。

経済で読み解く日本史・明治時代表紙

経済評論家の上念司さんが「お金の流れに注目して日本史を読み解く」ことをテーマに書かれたこの本。

江戸時代に続いての第4巻。いよいよ残すところあと2巻となりました。

金本位制の罠が面白い!
明治時代の士族の生き方…!

という、新しい視点で明治時代を楽しめる本でした。

室町・戦国時代〜大正・昭和時代までの全5巻セットのうち、4巻目の「明治時代」の感想として、特に面白いと感じた点を3つ紹介します。

その1:金本位制の罠が面白い!

金本位制とは、政府が発行する通貨の裏付け資産として金(ゴールド)の保有を義務付ける制度のことです。

1814年にイギリスが金本位制を確立したことから、イギリスと交易する国が金本位制を導入すれば

・貿易決済業務の効率化
・為替リスクの低減

というメリットが生じるため、ドイツやフランス、他のヨーロッパ諸国が相次ぎ金本位制に以降しました。

ところが金(ゴールド)の物理的な量に上限があるため、大量生産時代に入った決済通貨の原資として金(ゴールド)が不足するようになるという欠陥がありました。

これにより「モノが大量に生産されるにもかかわらず、お金の増加量が足りなければお金不足になる→デフレになる」というリスクが生じる構造があるそうです。

慢性的な通貨供給不足を招きやすく、デフレ期待を情勢しやすいという欠陥=罠があったんですね。

デフレになると経済が行き詰まり、過激思想に走りやすくなる…というのがこのシリーズを通じての筆者の指摘ですが、二度の世界大戦の真の原因についてもデフレによる景気の悪化だったと書かれています。

そしてそのデフレを招いたのは金本位制という通貨制度にあったと。

通貨制度が世界大戦をも引き起こしたという経済面からの視点に、またもや歴史の見方が変わり、面白い!と思いました。

その2:明治時代の士族について

江戸時代から明治時代へと変わった「御一新」により様々な改革が行われます。貨幣改革や地租改正など、多くのことが一気に進められる情報量の多さに改めて驚きましたが、なかでも士族に関する経済状況の変化が面白いと思いました。

士族はこれまで所属する藩から禄(給料=コメ)を貰っていましたが、明治時代になり、幕藩体制が消滅したことから士族が禄を貰う理由は消滅しました。しかし、士族が露頭に迷うことが社会問題化すると考えた新政府によって引き続き秩禄という形で減額されながらも支給が継続されていました

士族が職を失い、少ない秩禄で生活に困窮していたというのは歴史の授業でも学んだことではありましたが、この秩禄を支給されていた事に対して世間からの風当たりが強かったそうです。

廃藩置県が行われた1871年の段階で秩禄の支給総額が財政支出の38%を占めていたというから、国民の視点からすれば当然の不満だとは言えるでしょう。

しかし支配階級であった士族からすれば、公務員的なところから突然放り出されて苦しい生活を強いられたのに加え、世間からバッシングされ肩身の狭い思いをしなければならない…というのは辛かったでしょう。

平民として新しい仕事に精を出すか、再び侍として活躍するリスクを取るか。

この2つの道のうち、後者を選んだ者が対外戦争に活躍の場を見出そうとしたり、新政府に対する反乱を起こしたり、政治活動を起こしたりしたと。後の自由民権運動の盛り上がりの理由にも、この士族の不満があったというように指摘しています。

士族を取り巻く経済状況の変化が、その後の時代を動かした一つのエネルギーになっていたんですね。金=経済の恨みは恐ろしい。そのことを改めて感じたエピソードでした。

その3:日露戦争の資金調達、高橋是清

日本は南下するロシアに対抗する流れの中で、日清戦争から日露戦争へと突入していきます。

この日露戦争に際しての、資金調達のエピソードがこれまた面白かったです。

日清戦争後に金本位制に移行していた日本にとって、日露戦争の戦費調達に必要なのは金(ゴールド)でした。なぜなら欧米諸国から軍艦や機関銃などの最新装備を購入するためには、決済資金としての金(ゴールド)が必要だったからです。

これを調達するためには外貨建ての日本国債を発行するしかなかった訳で、担当したのが当時日銀副総裁だった高橋是清です。

当時の日本は新興国で国際市場からの信用はまだまだ低く、しかも大国ロシアとの開戦を控えるという状況は非常に厳しいもの。しかし、高橋是清はロンドン市場・アメリカ市場で1回目、2回目、3回目、4回目と国債の取引に成功を治めていきます。

起債の条件の変化に日露戦争の戦況が反映されていく様子に、戦争と経済の生々しい関係が見えて面白いと感じました

もう一点面白かったのは、世界の評価と日本の世論の違いです。

日露戦争を通じ、世界は日本の実力を認めて評価を与えた(起債条件の好転)のに対し、日本の世論はもっと多くのものを要求していたと書かれています。その背景にあったのは戦争中の増税、緊縮、生活困窮に端を発した過激思想で、さらにそれを煽って加速させたのが当時の新聞だという指摘です。

その背景には民権派、つまり秩禄処分に始まり、即時征韓論や西南戦争で夢破れた不平士族たちがいたという話で、金の恨みは恐ろしいという話に繋げています。

明治維新に始まる不平士族の不満が何十年経っても影響を与えていたことに改めて驚きを感じました。

それにしても筆者の新聞に対する評価は厳しい。当然といえば当然かもしれませんが…。

次は最終巻。大正・昭和時代

明治時代はかなり濃い内容でした。

江戸時代に終わりを告げた日本が、「全力で欧米列強に追いつき、不平等上条約を改正し、南下するロシアを食い止める」ことを目指した烈火のごとき時代でしたから、当然かもしれません。

本の内容を受け止めるためには、歴史の授業で習ったことだけでは全く足りませんでした。歴史についての知識をもっと持たないといけないと感じたことも収穫でした。

さて、次巻は最終巻、大正・昭和時代です。

どんなクライマックスを迎えるのか?

またまた続きが楽しみで仕方がありません。

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