【書評】「経済で読み解く日本史〜安土桃山時代」歴史の違う視点が面白い!

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こんにちは、霧島もとみです。

上念司さんの「経済で読み解く日本史〜安土桃山時代」を読んだ感想を紹介させていただきます。

経済で読み解く日本史・安土桃山時代表紙

経済評論家の上念司さんが「お金の流れに注目して日本史を読み解く」ことをテーマに書かれたこの本。

室町・戦国時代に続いての第2巻です。

信長・秀吉の新しい捉え方!
銀が与えた影響が面白い!

という、新しい視点で安土桃山時代を楽しめる面白い本でした。

室町・戦国時代〜大正・昭和時代までの全5巻セットのうち、2巻目の「安土桃山時代」の感想として、特に面白いと感じた点を3つ紹介します。

その1:世間のイメージと違う織田信長の姿

織田信長はぶっ壊すばかりの革新者ではなかった。

織田信長といえば戦国時代を代表する武将です。歴史本やテレビの番組で取り上げられることも多く、

・桶狭間の戦いや長篠の戦いなど、奇襲・新戦術での勝利
・比叡山の焼き討ちなど権威を恐れない魔王的な行動
・楽市楽座で経済を活性化

というような、破壊と創造を行った革新者というイメージを私は持っていました。

一言でいうと「覇王」です。

ですがこの本では、それは正確な評価ではないとしています。

むしろ織田信長を経営者に例えて「ゼロからイチを作り出した創業者」だとして、秀吉がそれを十とか百にしたと考えることで合点がいくとしています。

そのために排除するべきは排除し、利用できるものは利用するという柔軟な姿勢をとったのが織田信長だと。

例えば比叡山の焼き討ちをしたことから「宗教を弾圧した」というイメージを持ってしまいがちですが(僕もそうでした)、実際には寺社勢力と敵対していたばかりではなかったそうです。

そもそも信長自身のスポンサーが「津島神宮」と「熱田神宮」であること。また、越前を手に入れた時に織田劔神社を保護したり、1582年の伊勢神宮の式年遷宮の費用として大金を寄付したりもしたそうです。

比叡山や真言宗、臨済宗の寺の焼き討ち、一向一揆の殲滅などは、あくまで政治的・軍事的な理由があったからだとしています。室町時代から寺社勢力が経済的・軍事的に大きな勢力を持っていたことを考えると、これらは避けて通れない道ということは理解できます。

経済の面からは、「貨幣改革」「城割・検地」のエピソードが興味深かったですね。

貨幣改革は大量の私鋳銭に対応するための「撰銭令」を出すも、失敗に終わったこと。なぜ失敗に終わったかという考察がこれまた興味深いものでした。

また、「城割・検地」は一部地域のみの実施であったものの、これまでの支配形態を一変させる「領地のデジタル化」とも言える革新的なものだったことが面白かったですね。

検地といえば秀吉の「太閤検地」が教科書では有名ですが、信長が既に目指していたものだったとは。

いずれにしてもこれまでの信長像とは違う姿を見ることができ、面白い!と思いました。

その2:銀の動きと貨幣価値の話が面白い!

16世紀の動きのなかで興味深かったのが貨幣制度の大転換です。

日本の石見銀山で1533年以降に灰吹法で大量の銀が産出するようになり、日本全国に普及して日本の銀の産出量が飛躍的に向上したそうです。しかし日本国内では銅銭が貨幣として流通していたため銀には出番が少なく、密貿易によって中国へ持ち出され生糸や陶磁器などと交換されたと。

また、時を同じくして中国へ向けた複数の銀の流入ルートが形成されていたそうです。

  1. 日本から密貿易によってもたらされるルート
  2. スペインの定期船でメキシコからマニラ経由で運ばれるルート
  3. メキシコ産の銀がヨーロッパ経由でポルトガル船によって持ち込まれるルート

これらによって絹織物などの手工業製品が中国から世界各国に輸出され、世界中から銀が集まるという巨大な貿易ネットワークが構築されていたと。

銀が世界中から集まることでストック量が増大→銀が貨幣として流通しはじめ、従来の銅銭を中心とした貨幣量の不足問題を一気に改善し、空前の好景気をもたらしたというストーリーが描かれています。

推計によると当時の中国のGDPは世界全体の約30%を占めるほどだったそう…。

学校で学んできた歴史の中であまり注目してこなかった「銀」の発掘が、世界の経済を大きく動かしていたことに驚きを感じるとともに、貨幣が経済を動かすというダイナミズムを歴史で感じることができ、とても面白く感じました。

世界遺産で有名な石見銀山は凄い銀山だったんですね…。全く不勉強でした。

その3:秀吉の評価が面白い

信長の意志を継いだ後、たった3年で天下統一を成し遂げた秀吉。

この本の後半は秀吉の国内政策・対外政策について書かれています。これがまた面白い!

国内政策については「仕置き」。仕置きとは「城割」「検地」「刀狩」を三本柱に実施されたもので、「城割」「検地」は信長がデザインしたものです。

室町時代までの従来のビジネスモデルである「権門政治」を殲滅して、全国を豊臣化する。これによって日本の構造はがらっと姿を変えることになります。教科書では簡単な説明で終わったこれらのことが、より生々しく感じられるとともに、大きな改革であったことがこの本では実感できました。

経済の観点では、検地で導入した「石高制」で始まった物品貨幣による納税についての指摘が面白かったですね。
年貢米を収めるということの経済的な意味をこれまで考えていなかった事に気付かされました。

また、秀吉が進めた改革の原動力に「国際情勢への危機感」があったというのが驚きです。

対外政策については明への出兵ですね。秀吉といえば朝鮮出兵有名ですが、僕はこれまで主に歴史の授業を通じて「全国統一した秀吉が勢い余って」行い、失敗に終わったというイメージを持っていました

しかしこの本では外国勢力に対抗するために行ったということを指摘していて、確かにしっくりくる考えでした。なるほど!と納得させられました。

さらに面白いのが「ランドパワー」と「シーパワー」という視点での考察

地政学の観点から海洋国家を「シーパワー」といい、海から切り離されて遠くに逃げられない状況で異民族と戦いながら生存競争を勝ち抜いてきた国を「ランドパワー」と言うそうです。

秀吉が天下統一に向けて行ってきた戦いは「ランドパワー」に近いものであり、明を制圧しようとした時もこの「ランドパワー」の発想で戦ったため失敗したのではないか?という考察です。

これを「シーパワー」に発想を変え、オフショア・コントロールを目指せば日本が海洋国家になっていた可能性もあった…という考察も加えられており(後知恵ですが…と断りは入れています)、興味深いものでした。

次は江戸時代

他にもキリスト教国の脅威や、過去の失敗に学び未来に生かす経済学的思考など、色々と面白く楽しめるところがある本で、一気に読んでしまいました。

さて、次巻は江戸時代です。

江戸時代といえば「長期の安定させた盤石な体制」だと思っていましたが、本書では信長・秀吉の反動的な「ナアナア政治」だったと指摘しています。

またもや、見方が大きく変わってしまう予感がする次巻。続きが気になります…!

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