こんにちは、霧島もとみです。
三島由紀夫の小説「仮面の告白」を読んだ感想を紹介させていただきます。
仮面の告白は昭和24年、三島由紀夫が24歳の時に発表した作品で、初の書き下ろし小説でありながら大成功をおさめ、自身の代表作ともなった作品です。
戦後文学の代表的名作という声もあります。
さてこの「仮面の告白」は、三島自身の自伝的小説として女性に対する不能、男性に対する肉欲、美に対する執着心などを抱えた苦悩をありありと描ききった物語です。
多彩かつ詩的、緻密な文章で書かれた物語は、
これが私だ!壮絶なカミングアウト
という面白い作品でした。
「仮面の告白」はこんな物語
物語は冒頭の印象的な一文から始まります。
永いあいだ、私は自分が生まれたときの光景を見たことがあると言い張っていた。
生まれた時のことを覚えているなんて三島由紀夫は頭がいいんだね…ではなく、”産湯を使わされたタライの縁に光がさして黄金でできたように見えた”という美の原体験とも言えるようなことを生まれてすぐの状態で感じたという物凄いエピソードです。
冒頭から凄い。
さて、仮面の告白の物語は比較的シンプルです。
・第1章:幼少期の性癖への芽生え
・第2章:少年期の男への憧れ
・第3章:園子という女性との交際と別れ
・第4章:園子との再開
この物語の中で、主人公が自分自身の性的な嗜好を描き出していきます。主人公にどんな性癖があるのか?というと、主に次の4つです。
・美への執着心
・男性への強烈な肉欲
・死への憧れ
・女性への不能
これらの内面的な作用を自分自身の手で分析しながらありありと描いていく…というのを中心に物語は進みます。「仮面の告白」というタイトルのとおり、告白形式で進められていきます。
それだけだと「別に面白くなさそう…」という感じですが、しかし面白かった。
何が面白かったのか?について簡単に紹介させていただきます。
「仮面の告白」の見どころはここ!
「面白い!」と思ったところは、主人公の「女性に惹かれる心」と「男性への肉欲」とのせめぎ合いです。
主に第3章・第4章で展開します。
主人公が男性にしか性欲を持たないことは第2章までで明らかにされているのですが、第3章で知り合った友人の妹・園子に対して恋愛感情を持つんですね。
はっきりと好意を持ち、「接吻するぞ」という決意を持つまでに至ります。
自分が女性と正常な関わりを持てるのでは?という期待も高まります。
ところが実際に接吻した途端「何も感じない」自分に気付き、園子と距離を取るようになります。友人からの「園子や家族はそのつもりだが結婚するつもりがあるのか?」という問いかけに対しても、遠回しに結婚する気はないと回答するんですね。
そうしたら園子は別の男性とすぐに結婚をしてしまうんです。
そして何年後か、ばったりと再会する。再会した時に主人公はまだ園子に惹かれる心があることに気付き、性欲がないながらも、それから定期的に会うようになるんですね。
でも最終的に、夫と主人公との間で揺れている心情を園子に吐露され「このままでは駄目。会うのは最後にしよう」と持ちかけられます。
さあどうする?主人公の心は揺れます。
残り時間が限られる中、2人が立ち寄ったのはダンスホール。そこでなんと、主人公は椅子に座っている一人の男性に目線が釘付けになってしまいます。
「す、すげえ…」
園子の存在を忘れ、男性の姿から性的嗜好たっぷりの妄想を始めちゃうんですね。
そこで園子から「あと5分ね」と言われ、急に現実に引き戻されます。そして最後に「あなたはもう女を知ってるのね?」みたいな問答をした後に、別れの時刻を迎えるのですが、
この時にも主人公はこっそり男性の方を盗み見ます。
どれだけ好きなんだよと。しかし男性はいなくなっていて、椅子はからっぽ。続けてこの描写で物語は終わります。
空っぽの椅子が照りつく日差のなかに置かれ、卓の上にこぼれている何かの飲み物が、ぎらぎらと凄まじい反射をあげた。
「ぎらぎらと凄まじい反射。」
この描写に、「女性に惹かれる心を持ちながらも男性に対するぎらぎらした肉欲をやはり私は持っている」という強いメッセージを感じました。
私はそういう人間なんだ!
ということを声高に叫んでいるように聞こえたんです。最終的にこれが俺なんだという、まさに壮絶なカミングアウトです。
圧倒される最後です。ここが最大の見所で、面白いと思いました。
昭和24年という時代性を考えると、当時の衝撃の凄まじさは相当なものだったと想像しますが、それを抜きにしても十分楽しめる作品でした。
読むのに少し労力はかかりますが、性に悩める精神と壮絶なカミングアウトの物語は読んでみて損はありません!
なお「中田敦彦のYouTube大学」でも紹介されていますので、あわせて見てみると面白いです。三島由紀夫の写真がちょっと怖そうですけど…。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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