3000文字「本」。
久しぶりに懐かしい言葉を聞きました。
3000文字チャレンジといえば、画像禁止!装飾禁止!文字だけで3000文字以上のブログ記事を書きましょうという知る人ぞ知る変態企画であり、また同時に、私にブログを書くことの喜びを教えてくれた天才企画でもあります。
何気なくX(旧Twitter・・・って、いつまでこの補足は付くのだろう?)で目に飛び込んできたのが3000文字チャレンジ公式アカウントのツイートじゃなくてポスト。
見た瞬間の衝撃たるや今年1番の大きさ。例えるなら、30年前に生き別れた母とスカンジナビア半島でばったり再開したときのような衝撃。なんだよ、こんなところで生きてたのかよ・・・驚きながらも様々な記憶と感情とが一瞬のうちに交錯するような衝撃。
気がついたら、
「書こう」
と衝き動かされていました。
さて、本といえば、意識高い系読書分派の私としては書かなければならないテーマがあります。それは、
「私を変えた1冊!!」
「私が影響を受けた本◯◯冊!!」
という意識高い系どストライクなテーマのブログであります。幸いにも、ここ数年間、意識高い系の自己啓発本をドミノ倒しできるくらい多量に摂取してきました。
その中から珠玉の数冊を選び、ちょちょいと紹介すれば、あっというまに3000文字なんて書けてしまいます。超楽勝です。
でも、ふと思いました。
それでいいのか。
お前は、30年前ぶりにスカンジナビア半島で再会した生き別れの母に、「7つの習慣」のブログ記事を読ませるような無粋な男なのか。
違う。
違うだろおおおおお!!
そう。そんな記事は誰でも書ける。事実、「7つの習慣 紹介」でググればなんと約29,800,000件(0.44秒)もの数がヒットする。おいおいマジか。有名にも程ってもんがあるだろ。予想外の数に圧倒されちゃうよ。
違う。
そんなものは、違う。
「本」というものの一面しか見ていない。それは、本というものが仮に正二十面体だとしたら、偶然に光が垂直に輝かせた1面を見ているに過ぎない。斜めにしか光が当たっていない面もあれば、全く影の中に消えてしまった面だってある。
光があれば影がある・・・私の好きな言葉です。
私は、それを書くことにします。
私が書くのは、私を影に導いた本について。
すなわち、
「私の人生を厨二病に変えた本ベスト3」
です。
ということで、3000文字チャレンジにありがちな「前置きの無駄話でやたらと文字数を稼ぐ」といういつもの儀式を通過しましたので、いよいよ本題の記事に入っていきたいと思います。
時間を無駄にしてもいいよと方だけ、この先にお進みください。
とはいえ、既に相当な時間を無駄にしていますので、せっかくですから、あと少しの時間もドブに捨ててみてください。
その1:車の前に飛び出したい!自己犠牲の夢を与えた本
「タッチ」(あだち充、小学館)
「俺たちのフィールド」(村枝賢一、小学館)
「タッチ」は言わずとしれた国民的にヒットした超有名漫画です。
南ちゃんブームを巻き起こし、高校野球人気を加速させたこの漫画に人生を変えられた人は多くいることでしょう。
一方、「俺たちのフィールド」は、タッチまでのヒット作ではないものの、迫力溢れるサッカー漫画として、そこそこ多くのファンに受け入れられた名作です。
さて、野球とサッカーという異なるジャンルのこの2作、実は、非常ーーーーに重要な点が一致しています。
それは、
主人公の身近な人物が他人をかばって交通事故で死ぬ
という展開です。
タッチでは、主人公の弟・上杉和也が、トラックに轢かれようとする子供を助けるために飛び込み、事故に巻き込まれ、亡くなりました。
俺たちのフィールドでは、主人公の父・高杉貫一が、自動車に轢かれようとする子供を助けるために飛び込み、事故に巻き込まれ、亡くなりました。
そしてこの漫画を読んだ私がどうなったか。
野球やサッカーを頑張りたい!!
と思ったのではなく、
他人を庇って車道に飛び込んでいく姿、カッコイイ・・・
と感じたのです。
それも、ド強烈に。それからというもの、
交通事故に遭いそうな誰か(できれば好きな子)を庇って死にたい
という謎の願望を強烈に抱くようになりました。
ドガッシャーーーーンン!!!
「おい、大丈夫か!!君!!」
「えっ!?もとみくん、私を庇って・・・!?」
(・・・フッ、無事だったみたいだね・・・)
毎夜布団に入るたびにこんな夢想を膨らませていました。
間違いなく、私の人生に影響を与えた本だと言えるでしょう。
その2:七鍵守護神!!詠唱の後の虚しさを教えてくれた本
「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」(萩原一至、集英社)
ネットフリックスでアニメ化されて話題となった「BASTARD!! -暗黒の破壊神-」も、私の人生に大きな影響を与えた本です。
萩原一至さんの超絶美麗な絵により描き出される壮大な魔導漫画で、ジャンプ読者たちのハートを鷲掴みにした傑作です。また、少年誌に似つかわしくないセリフ回しやアハンなシーンで、違った意味でも少年たちのハートを鷲掴みにしていました。
主人公が最強、それでいて残忍で狡猾、大食漢で好色というとんでもない俺様キャラ・・・といえば想像できるでしょうか。例えるなら、シティーハンターの冴羽遼の・・・というよりもむしろ、アリスソフトのランスさんを少年誌用にマイルドにした感じの人物です。
さて、この漫画の圧倒的な描写力の前に、素直で何でも信じる少年だった私は、こう思いました。
「本当は、現実でも魔法が使えるのでは・・・??」
いや、もちろん本当には思わないですよ。さすがに分かっています。漫画は漫画。フィクションの世界。でも、ひょっとして、0.0001%くらいでも、現実にこんな魔法が使えてしまう事が起きてしまうのではないか?
というくらいの感度で、ちょっとだけ思ったんです。
そして私は、漫画で詠唱される呪文を片っ端から暗記し始めました。ノートに何度も書き写し、何度も暗唱する。
大人になった今でも、幾つかの呪文を覚えているほどには頑張りました。
例えば、七鍵守護神(ハーロ・イーン)という古代語魔術(ハイ・エイシエント)の呪文がこんな感じです。
カイザード・アルザード・キ・スク・ハンセ・グロス・シルク
灰燼と化せ 冥界の賢者
七つの鍵をもて 開け 地獄の門
こんなのをいっぱいノートに書いていました。多分、期末テスト前の英単語帳よりもびっしり書き込んでいたと思います。
そして詠唱しました。
何度も何度も。
盛り上がるんですよね。特に、最初の「カイザード・アルザード・・・」のあたり。すっかり魔道士になりきった気分で詠唱を進めていき、研ぎ澄まされた集中力で最後の「地獄の門」まで唱えきったとき。
・・・・・・
だが、何も起こらない。(当たり前)
それまでの高ぶった気分はどこへやら。一瞬にして現実に引き戻され、喪失感がどっと両肩にのしかかってくる感覚。
これを何度も何度も、詠唱するたびに味わいました。
もちろん最後まで、一度たりとも、七鍵守護神は効果を発揮することはありませんでした。
そしていつしか僕は気付きました。
漫画は、漫画なのだと。
フィクションなのだと。
これも間違いなく、私の人生に影響を与えた本だと言えるでしょう。
その3:だから僕は天才だ!謎の自信を与えてくれた本
「三国志」(吉川英治)
最後に紹介するのは、もう有名すぎる本である「三国志」です。
小学4生の頃、NECのPC98版三国志を友だちの家で遊んですっかりドハマリした私は、親に頼んで吉川英治さんの小説「三国志」を全巻買ってもらいました。
文字だけの本、それも全8巻がびっしりとテキストで埋め尽くされたような本を買って欲しいと言われた親は、どんな気持ちだったでしょう。
多分、
「おお、遂にちゃんとした本を読んでくれるようになったか」
と大喜びだったのではないかと思います。
確かに最初こそ読むのに苦労した気がしましたが、あまりに物語が面白くて、辞書を引きながら一気に読んでしまいました。
思えば、これをきっかけに、色々な文字の本を読むようになったと思います。それまでは漫画一辺倒の読書生活を送っていましたので、ちゃんとした意味で、人生を変えた本だったと言えるかもしれません。
さて。
この三国志で私が一番強く影響を受けたことが何かと言いますと。
関羽の義理人情に厚い生き方か。
曹操の英雄らしい活躍か。
あるいは趙雲の一騎駆けか・・・?
ではありません。
三国志を読破した私が何を考えたかというと、
「僕は孔明の生まれ変わりだ」
ということでした。
実はですね、この頃、自分のことを頭がいいと思っていたんですよ。ド田舎の市立小学校に通うただの子供で、成績もオール5手前でしかなかったのに、なぜか「自分は天才かもしれない」と思っていたんですね。
そこにこの三国志。
軍略の天才として描かれていた諸葛孔明をまるで自分のことのように強烈に感情移入してしまい、その挙げ句、自分は孔明の生まれ変わりだという妄想を持つに至ってしまったんです。
さすがに口にすることはありませんでしたが、しばらくの間、この妄想は続きました。
すると不思議なもので、自分の中に根拠のない自信を感じるようになったんですね。
孔明の生まれ変わりだという妄想が、「だから自分は天才なのだ」という自信を持たせたんです。
この自信は、中学校2年生頃まで続きました。
よく考えたら凄いことです。自信を与えられる本って、なかなかありませんよ?究極の自己啓発本、それが三国志。
しかし残念なことに、「生まれ変わりなどない」という事実に気がつくと同時に、この自信は塵のように跡形もなく消え去ってしまいました。
残念です。
ずっと生まれ変わりだと信じることができていたら、今頃は、ひとかどの人物になれていたかもしれません。
ああ・・・勿体無い。
これも間違いなく、私の人生に影響を与えた本だと言えるでしょう。
おわりに
いかがだったでしょうか。本が人に与える影響、その影の部分を感じていただくことができれば幸いです。
もちろん本に罪はありません。読み手である私自身がネジ曲がっていたから、捻じ曲がった影響を受けたのに過ぎないのです。
思えば何かと影響を受けやすい少年でした。他にも例を上げれば枚挙にいとまがありません。
・中学校のサッカーの授業中、ディフェンスを固めようとして地面に五芒星を書いた(ダイの大冒険)
・拳をくっつけた状態から干した布団を撃ち抜く練習をした(修羅の門)
・やたらと震脚をするようになった(拳児)
・鍼灸師になりたいと親に言った(Jドリーム)
・コーヒーよりも紅茶を飲むことにこだわりを見せた(銀河英雄伝説)
・年賀状の差出人を「自由惑星同盟イゼルローン要塞 ヤン・ウェンリー」と書いて出した(銀河英雄伝説)
・美術の作品で顔のレリーフ作品を作ったとき、それにパンツ型の装飾部品を被せて怒られた(変態仮面)
大人になった今思うことは、
影響を受けるベクトルを間違えちゃってた!!
ということです。
もし、少しでも現実的な角度で影響を受けていたとしたら、もっと社会の役に立つ人間になれていたかもしれない・・・。
痛烈に感じます。
でも、もしそうなっていたら、こんなバカな記事は書けなかったわけで。
どちらが良かったのかなんて分かりません。それを判断するのは後世の歴史家の仕事だからです。
今はただ、私を形作ってくれた本との出会いに感謝しています。
本に、ありがとう。
漫画に、さようなら。
そして全ての本の子供達に
おめでとう。
以上でこの記事は終わりです。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。