世界でいちばんゴールに賭ける男【3000文字チャレンジ】

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こんにちは、霧島もとみです。

3000文字チャレンジも記念すべき1年目を迎えました。

お題はゴール

人生のゴールなど壮大な内容も書くことができる無限大なお題ですが、ここはあえて…という訳ではありませんが、なんの含蓄もないネタ記事で勝負したいと思います!

時間を無駄にしてもいいよという方は、ぜひご覧ください。

「ゴールに賭ける男」

「よし。東京オリンピックのマラソンコースも正式に決まったことだし、練習に励むとするか」

…はい、恭也コーチ。今日もよろしくお願いします。

「よし。じゃあ練習の前に確認だが、お前はマラソンで一番大事なことが何か分かってるか?」

…マラソンで一番大事なことですか?

「そうだ!」

…スピードにスタミナ、乱れのないフォーム、心肺機能の強化とか、大事なことは山ほどあるけど、一番大事なことかあ。

「どうした分からないのか?」

…いや、分かってますよ。

「よし言ってみろ!」

…はい!ズバリ気持ちです!諦めずに走り切る気持ち。全てを出しきる気持ち。絶対に勝つという強い気持ち!一番大事なことはこれです!

ば、馬鹿野郎!何が気持ちだああああああ!!」

…えっ!違うんですか!?

「ち〜が〜う〜だ〜ろ!!」

…どっかの元議員みたいな言い方、やめてください。

「全く。お前はマラソンのソの字も分かってなかったのか」

…それ、まあまあ知ってる感じですけど。

「まあいい。教えてやろう」

…はい。お願いします。

 

「いいか。マラソンで一番大事なことは、ゴールだ」

…ゴ、ゴール??

「そう。ゴールを切るその瞬間をどうやって迎えるか。これが一番大事なことで間違いない」

…そんなこと初めて聞きましたよ。

「そりゃそうだ。今、思い付いたからな」

…今かよ!あ、いや、今ですか。

「そうだ。だが正しいぞ。マラソンで一番大事なことは、ゴールなんだ」

…やっぱりよく分からないんで、教えてもらっていいですか。

「うむ。いいだろう。それでは、教えて下さい恭也コーチと言え」

…うわっ、ウザい。

「ん?何か言ったか?」

…いえ、教えて下さい恭也コーチ。

 

「いいか。考えてみろ。仮にお前がマラソンで優勝したとしてだな、テレビで見ている視聴者に一番印象に残るのはどこのシーンだと思う?」

…そりゃまあ、どんなレースかによるとも思いますけど、勝負を賭けたスパートのシーンとか、先頭集団で競り合うところとか、苦しみに耐えて必死に走る姿とか、レース中の見せ場なシーンじゃないですか?

「フッ。甘いな。甘すぎる」

…えー、違いますか?

「やっぱ分かってないな。それはな、レースの最初から最後までテレビ中継を見て楽しむ、かなりマニアックな人の話だ

…マ、マニアック?

「そりゃお前はマラソンが好きだからな。そういう所が印象に残るのかもしれない。でもな、それはほんの一握りの、ガチャでも出てこない超レアレアな存在だ。

考えてもみろ。渋谷でタピってる若者たちが街頭テレビでマラソンに釘付けなの、見たことあるか?」

…てか、街頭テレビなんてそうそう見ないですけど。

「まず間違いなく彼らがマラソンを目にするとしたら、ネットニュースだ。そこには写真か動画か、いずれにしても写るヴィジュアルはほんのわずかなものだ」

…あっ、なるほど。

「分かったか。つまりそこで使われるのが、ゴールの瞬間の映像なんだよ。または写真。そういうことだ」

…なるほどですねコーチ。

「だからマラソンで一番大事なのはゴールなんだ。その瞬間しか見ない人が!この勝利はこんなに価値があるんだ!厳しいレースに耐えて執念を爆発させて、ウンコも我慢して走りきったんだねって思えるような、そんなゴールにしなきゃ駄目なんだよ」

…ウンコは関係ないと思いますけどね。ゴールの大切さは何だか分かった気がします。フワフワっと。

「フワフワっととは何だ!」

…いえ!よく分かりました。

「ならいい」

…ありがとうございます。

 

「よし。そしたら今日は、ゴールの練習をするぞ」

…ゴ、ゴールの練習!?

「そうだ。ゴールの練習だ」

…なんでゴールの練習?ていうか、どういう練習するんですか?

「なんだお前、ゴールの大事さがまだ分からないのか」

…いやそれは分かりましたけど。

「だったらツベコベ言わずにやれ。とりあえず、ここでゴールしてみろ」

…ゴールしてみろって言われても。

「いいからやるんだよ!さあ42.195kmを先頭で走りきって、最後のストレートをいま終えようとしています!」

…はい。ゴ、ゴールゥ…

「バカ野郎!なんだそのフニャフニャに気の抜けたゴールは!」

…そう言われても。急には無理ですよ。

 

「いいか。ゴールは瞬間の芸術なんだ」

…瞬間の芸術?なんかカッコいい。

「そうだ。ゴールという瞬間に、レースの全てを凝縮しなきゃならないんだ。ゴールというナノ・セカンドに42.195kmの、2時間のドラマを閉じ込めて表現しなきゃならない、果てしない芸術なんだよ」

…何か分かってきましたよ、コーチ。俺に究極のゴールを教えて下さい!

「分かってくれたか。では、教えて下さい恭也コーチと言え!」

…うわっ、またウザい。

「何か言ったか?」

…いえ。教えて下さい恭也コーチ。

 

「よし。まずは、表情だ。何より印象に残るのが選手の表情だからな。まずは全力でやってみろ」

…こ、こうですか?(く、苦しみに耐えてゴールしたぞ…俺!!)

「全然ダメだな」

…ハァハァ、駄目ですか。

「なんか頑張った感だけをアピールされてもなあ。それじゃレースの感動は伝わってこないんだよなあ」

…む、難しいっすね。

「よし。まあベースはそれでいいとして、やっぱり素直な喜びの表情が欲しいな。レースに勝った時の、歓喜の爆発は見てても清々しいだろ。それを顔の右半分で表現するんだ」

…み、右半分?じゃあ左側は?

「さっきの苦しみの表情だよ」

…で、出来ますかね?

「出来る出来ないじゃない、やるかやらないかだ」

…わ、分かりました。えっと…ゴ、ゴールゥゥゥ!!(苦しんだけど、やっぱり勝って最高に嬉しい…!!)

「おおかなり良くなったぞ。やればできるじゃないか」

…ハァハァ、ありがとうございます!

 

「でも何か物足りないなあ」

…えっ?何がですか?

「マラソンってそれだけかなあ。例えばライバルと競り合った時の緊張感とか、そんなのもあるよなあ」

…まあ、ありますかね。

「よしっ!さっきの表情に加えて、今度は左目で、ライバルとの激しい戦いを表現するんだ!」

…ひ、左目で表現?どうやるんですか?

「あの激しかった戦いの瞬間を思い出すんだよ!」

…ハァハァ…あの激しかった戦いの…瞬間…

「そうだいいぞ」

…思い出した!こうだ!(左目クワッ!!)

「凄いじゃないか!あとはハイ!苦しみと歓喜の表情!」

…えっと、ゴ、ゴールゥゥゥ!!(左目クワッ!苦しんだけどやっぱり勝って最高に嬉しい…!!)

「よし!いいぞ!でも何か、足りないなあ」

…ハァハァ、えっ、何がですか。

「レースに賭ける思いが見えないんだよ。お前がどれだけのものを犠牲にしてこのレースに臨んだのか。その物語こそが、視聴者が求めてるものじゃないかって気がする」

…確かに物語って大事っすね。

 

「よし!そのお前の物語を、顎の歪みで表現するんだ!」

…あ、顎ですか?

「そうだよ。ゴールの瞬間に言いたいことがあるはずだ。語りたい物語があるはずだ。だけど言えない。語れない。そのもどかしさの魂を、顎の歪みに乗せきってみろ!」

…なるほど、分かりました…!

「よし、やってみろ!」

顎クワッ!!(ボンバイエ!!)

「い〜〜じゃないか!やれば出来るは魔法の言葉だな!」

…ありがとうございます!

「よし、そこに今までの表情を乗せてゴールだ!」

…はいっ!ゴ、ゴールゥゥゥゥゥゥ!!(顎ボンバイエ!左目クワッ!苦しんだけどやっぱり勝って最高に嬉しい…!!)

「いいぞおお!だがあと何か一つ足りないな」

…えっ、あと一つ…?もう顔面筋肉が崩壊しそうなんですけど…。

 

「何が足りないのかなあ」

…ハァハァ、もう十分じゃないですかね。

「そうか分かったぞ。愛だ。マラソンという競技に全てを捧げた無償の愛が見えないんだ。だから感動が仕上がらないんだよ」

…あ、愛ですか?

「そうだ!お前のマラソンへの愛を眉間に滾らせろ!その愛の前にきっと視聴者は果てしない感動を受け取るだろう!」

…眉間に愛…。

「さあやってみるんだ!」

…わ、分かりました…。眉間に愛…。お、俺は、マラソンが大好きだあっ。愛してるんだあっ。この身の全てをお前に捧ぐ!受けとってくれえええ!!(眉間パァァッ!!

「それだよそれ!さあ完成だ!

お前の全てを見せてみろ!

…えっ、どうだったっけ、えっとえっと、よし!これが俺の究極のゴールだ!見ろおおおぉ!!

 

ゴ、ゴールゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!(顎ボンバイエ!左目クワッ!苦しんだけどやっぱり勝って最高に嬉しい…!!そして愛を受け取れ眉間パァァッ!!)

 

「よーし完成だ!」

…あ、ありがとうございます!これが究極のゴールなんですね!

「その通り。じゃあ後は、マラソンに出れる走りを身にをつけるだけだな。まずは持久走1.5kmで10分を切るところから始めようか」

って、ゴール以前の問題やないかい!

もうええわ!

 

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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