こんにちは、霧島もとみです。
上念司さんの「経済で読み解く日本史〜大正・昭和時代」を読んだ感想を紹介させていただきます。
経済評論家の上念司さんが「お金の流れに注目して日本史を読み解く」ことをテーマに書かれたこの本。
明治時代に続いての第5巻は遂に最終巻となりました。
しかし…最後に来て恐ろしいほどに濃い。
第一次世界大戦から第二次世界大戦、戦後の復興からバブル景気までの期間を経済の視点からグワァアアッッ!!と書いてるものだから、怒涛のような内容が詰め込まれています。
正直、どこまで理解できているのか自信がありません。
そんななかで恐縮ですが、室町・戦国時代〜大正・昭和時代までの全5巻セットのうち、最終巻・5巻目「大正・昭和時代」の感想を紹介します。
その1:引き続き、金本位制
金本位制とは、政府が発行する通貨の裏付け資産として金(ゴールド)の保有を義務付ける制度のことです。
第4巻「明治時代」では、金本位制の「慢性的な通貨供給不足を招きやすく、デフレ期待を情勢しやすい」という欠陥により経済が混乱し、景気が悪化したことが世界大戦の原因だったことが書かれていましたが、第5巻でも引き続き金本位制についてのエピソードが続きます。
第一次世界大戦時には各国が戦費調達のために金本位制を離脱したものの、大戦後には金本位制に復帰し、苦しい経済運営を強いられました(金本位制への復帰を選んだのは各国ですが…)。これによって不況を招き、経済と政治の混乱を招いていった…というのが第二次世界大戦への大きな流れの一つとして紹介されています。
日本での金本位制への復帰をめぐる議論・争いも面白い。筆者としても力が入っているのでしょう。
当時の”グローバル・スタンダード”だと考えられていた金本位制に各国が呪縛のように取り憑かれ、不況に苦しむ道へ進んでいく。
その様子に経済の不思議さと、金本位制という貨幣制度の魔力のようなものを感じました。
その2:やっぱり濃い。大正・昭和。
大正から昭和というと漠然としたイメージが浮かびますが、この間に起きた出来事で言い換えると、「第一次世界大戦後から、バブル景気まで」となります。
やっぱり内容が濃すぎる!
これが文庫版1冊に凝縮されているから、読む方もかなり大変です。なかなか頭に入ってこないし、ストーリーを整理していくのだけでも大変です。
同時に、この期間の日本や世界を知らない事を痛感しました。
勿論歴史の授業(主に高校)で勉強はしたのですが、センター試験用の暗記でしか覚えていなかったからでしょう、事件の名称・年号、人物名などが断片的にしか残ってなく、「理解」とは程遠いレベルでした。
…もう一度学び直しをしたいという気持ちが湧いてきました。
学び直して知識を蓄えて、もう一度この本を読み直したいです。理解ができないままでいるのは悔しい。
その3:シリーズを通しての感想
全5巻を通してのテーマは、「人々は経済的に困窮すると、ヤケを起こして、普段は見向きもされない過激思想に救済を求める」というものでした。
第5巻では、第一次世界大戦後にナチスに傾いていったドイツや、新聞・メディアに誘導されていった日本の様子などにこの光景を見ることができました。
経済の大切さを改めて感じるとともに、世論というもの、新聞・メディアとの自分との関係性を見直さなければならないと感じました。
経済的に困窮するとヤケを起こすことは分かりますが、では、「普段は見向きもされない過激思想」は誰が広めているのだろうか?という事です。現代でいうと、新聞などのメディアが該当するでしょう。
まず、メディアは決して中立・公正な情報を発信しているものではなく、世論を誘導しようという目的を持って発信しているということを理解しなければならないこと。
誘導しようという意図がなくとも、より過激で「売れる」ものを発信しようとすることがあること。
これらを鵜呑みにすることは危険なことであること。
私自身も新聞・メディアの取材を受けたことがありますが、そういえば中には「自分の作ったシナリオ」「とにかく話題性があるトピック」を書きたい、そのために都合のいい言質を誰でもいいから取りたい、という姿勢が前面に出ていると感じる記者がいました。そういう人がメディアにいることを考えれば、読み手として接する時も十分な警戒が必要です。
このあたりも「経済を通して日本の歴史を見る」ことと同じように、著者が伝えたいことだと感じました。そういう視点の大切さを感じられたことも、価値があったと思います。
シリーズを通じてお金の流れから語られる新しい歴史の姿を見ることができた「経済で読み解く日本史」は、本当に面白く読むことが出来ました。
4巻・5巻は自分自身の知識不足で消化不良なところがありましたが、「もう無理です」となるのではなく、歴史をもう一度勉強して理解したいと思わせる力のある面白い本だったと言えます。
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