何か、疲れた。
瞼が重くのしかかり、全身をやりきれない倦怠感が包む。こんな時、人間はこう考えがちだ。
「人生って何なんだろう」
そう。そして今の私もその状態にいた。そして思っていた。人生って何なんだろう、と。
「それは簡単さ」
不意に現れた皆川恭也と名乗るその男は、おもむろに話し始めた。
「人生は、例えるならこの一杯のラーメンさ。フッ」
これはラーメンではなく油そばだが、私は聞いてみた。
「ラーメンが人生って、一体どういうことなのでしょう」
恭也は言った。
「人はいつか死ぬ。ラーメンは食べたら無くなる」
一呼吸置き、
「この世の真理さ」
と。
恭也は続けた。
「人生には彩りが大事だ。そしてこのラーメンには、酢とラー油がよく似合う」
前髪をいじくり、
「そこも同じだ。本当、良く似ているよ」
と。
私は尋ねた。
「このラーメンが人生と同じとは、とても思えません」
恭也は言った。
「そうら。そう言っている間に、ラーメンは形を変えてしまったぞ。諸行無常の響きありだ。まさに人生じゃあないか」
ラーメンではなく油そばなのだが、この際それは置いておくことにしよう。
恭也は言った。
「ほうら、ラーメンはどんどん姿を消していくぞ。人生と同じだろう?何をしなくても時間はどんどん過ぎていき…やがて人は死ぬのだ。立ち止まることは出来ない。光陰矢の如しだ」
私は嘆いた。
「人生はなんと儚いものでしょうか」
恭也は言った。
「そう。人生は儚い。そしてラーメンは旨い」
恭也は言った。
「そうら。あとこれだけになってしまったぞ。お前の人生も本当に短く、儚いものだったな」
私は嘆いた。
「ああ、儚い蜃気楼のように、私の人生はただ過ぎてゆくだけしかないのでしょうか」
恭也は言った。
「そうだ。だが、嘆くことはない。その一瞬一瞬を真剣に生きれば、宝石の輝きをもって人生は彩られるだろう。その一口一口を全身全霊で味わい尽くせば、ラーメンの喜びは五臓六腑に染み渡るだろう」
私は尋ねた。
「それはつまり、
今を生きるということでしょうか」
恭也は答えた。
「そのとおりだ」
恭也は言った。
「だから、心してラーメンを食べるがよい」
最後に私は気づいた。
写真を撮るのと、湧いたブログアイデア(つまりこの記事のこと)に思いを馳せるのに夢中で、
ラーメンの味を全然覚えていませんでした。
「今を生きる」の実践度、0%
何をやってるんだ俺は~~~!!!!バカバカバカ!!!