チョコレー党のたった一つの大きな嘘【3000文字チャレンジ】

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霧島もとみです。

今回の3000文字チャレンジは「チョコレート」。

参加4回目にして、僕にとっては最大の難題でした。

いくら絞り出そうとしても何も出てこない。そう。僕には縁が無いんですよね。チョコレート。

普通には食べるけど、チョコレートへの強烈な思い入れもなければ、胸をくすぐるような思い出もありません。

強いてあげるとすれば、一度も本命チョコを貰ったことがないという切ない事実のみです。

これじゃあ面白い話なんて書けない。駄目駄目駄目!!

無駄無駄無駄ァァァァッッッ!!

 

では一体何を題材に書けばいいのか。

僕は悩みました。

悩んで悩んで、悩みまくりました。

悩んだ末にかろうじて浮かんだのは「念能力がチョコレート」。
水見式で念能力を判定したところ、水がチョコレートに変化して・・・という話。

 

駄目だ!つまらなさ過ぎる!!

 

完全に行き詰まった僕は、気持ちを入れ替えて、暴走することにしました。

ブログということを忘れて完全妄想の物語を書いてしまえと。

というわけで今回は荒唐無稽なチョコレートの話をお届けします。

ある地方都市を舞台に繰り広げられる政変の始まり始まり・・・

 

【ここから本編】

 

甘井(あまい)という一人の経営者がいた。

その人物は、自らが起業したIT会社をおそろしいスピードで成長させ、若くして10兆円を超える財をなした。

その活動は事業だけには留まらなかった。有名芸能人との交際に始まり、民間人初めてのマリアナ海溝有人潜航、YouTubeでの9億9999万円プレゼント企画など、とにかく注目を浴びることが多い人物だった。

40歳を過ぎてなおエネルギーに溢れるその男が次に何をするのか、日本中がたえず注目していた。

その甘井が行った、あるひとつの記者会見が、とある地方都市をひっくり返す大騒動の発端となった。

 

「私はこのたび、この街の未来を変える戦いに挑むことにしました」

 

「若者たちが夢を見られる街を実現する。この大きな夢に向けて、夢に賛同する私の仲間たちが、きたる市議会議員選挙に立候補します」

 

「そのための政党を結成します。政党名は・・・」

 

「未来に甘い夢を。チョコレー党です!」

 

甘井の出身地であるM市は、1ヶ月後に定数40人を入れ替える市議会議員選挙を行うことになっていた。

この選挙に対し、なんと甘井は、40人の候補者を擁立する計画を発表したのである。

 

そしてその政党名に、自身が最も愛する存在と常日頃から公言してはばからない「チョコレート」の名前を冠してきた。

 

人口50万人の地方都市は蜂の巣をつついたどころではない騒ぎになった。

 

「チョコレー党だと!?ふざけるにも程がある!!」

 

猛烈な反発を見せたのは現職の市議会議員たちだった。

街頭演説、支持者との集会、地方メディアなどあらゆる方法を駆使し、甘井とチョコレー党を声高に非難した。

 

さらには選挙での党派を越えた共闘を約束するに至り、

「チョコレー党 VS 既存ALL政党」

という史上類を見ない市議会議員選挙の戦いの火蓋が切られることになった。

 

街中のいたるところで、候補者たちによる殺気すら漂う演説合戦が繰り広げられた。

 

当初は強力な選挙地盤を有し、実績のある現職議員の陣営が当然に有利と考えられていた。

しかし甘井の圧倒的な資金力、人脈が次第に選挙の流れを変えていった。

 

甘井は、コネクションのある超の付く有名人を次々と応援演説に投入し、マスコミの話題をさらっていった。

さらにチョコレー党の候補者たち自身の力強く説得力のある演説が、少しずつ市民の心を震わせていった。

 

「確かに、政党名はふざけているかもしれません!」

 

「しかし!本当にふざけているのは、未来に甘い夢を見られないこの社会です!

私たちの政党名は、甘い夢を見せる覚悟の表れです!!」

 

彼らは入念なレクチャーを受け、甘井の理念を骨の髄まで叩き込まれた精鋭揃いだった。

 

かつてない危機感に襲われた現職陣営は、いよいよそれぞれの党本部への援助を求めた。

 

何と、市議会議員選挙の応援演説に、各政党の党首・要職、現職総理大臣までもが駆け付ける騒ぎとなったのである。

 

この過剰ともいえる選挙合戦が、市民たちを浮足立たせた。そして「何かが変わるかもしれない」という予感を感じさせた。

 

空気が変わった。

 

結果、チョコレー党は定員40人に対して32人の当選者を出した。

現職側の当選者はわずか8人のみ。惨敗だった。

 

この選挙結果はM市だけでなく、日本中をざわつかせた。全てのメディアがこの事実を取り上げ、M市に注目した。

 

しかし甘井の動きはこれに留まらなかった。

間髪入れず、次の一手を打ってきた。

 

議員定数の4分の3以上を確保したチョコレー党は、招集された臨時議会において、ただちに市長不信任決議を議決したのだ。

 

市長は議会の解散か、自身の失職を選ぶことになる。

市長の選択は自身の失職だった。

市議会議員選挙に続き、市長選挙が実施される運びとなったのである。

 

なぜ議会を解散しなかったのかという問いに対して、当時の市長だった苦井(にがい)はこう答えた。

 

「いやね、血がね、たぎったんですよ。年甲斐もなく、私も戦ってみたいと」

 

甘井はチョコレー党からついに自身が市長候補として立候補し、選挙戦に挑んだ。

 

市長選は、先の市議会議員選挙を越える苛烈な争いを見せた。

総力を結集した現職市長側は血みどろの選挙戦を繰り広げ、戦いは拮抗した。

 

投票率80%を越えるかつてない選挙の結果、チョコレー党から新市長として甘井が当選した。

チョコレー党はたった数ヶ月の間にM市の市長・市議会という双方の権力を手中に収め、M市の市政を強力に推進する体制を整えたのだ。

 

「皆様、ありがとうございます!」

 

「私、甘井は約束します!」

 

「皆様が、私の一番好きなチョコレートのような甘い未来を夢見ることができる、そんなまちづくりを進めます!」

 

新しい未来が始まるー。

そんな期待がM市全体を包んでいた。

 

甘井はただちに市政改革に取り組んだ。

「未来に夢がみられるまち」を旗印に、強引とも言える改革を強力に推し進めた。

 

合理的で偏りのない公平な改革は、痛みを伴わないわけではなかったが、市民たちはおおむね賛同の意思を見せていた。

何より「何かが変わるかもしれない」という大きな期待がM市全体を覆っていた。

 

そう、市民たちはチョコレー党が見せる夢を、既に自分たちの未来に見るようになっていたのだ。

 

若者だけではない。高齢者たちも夢を見るようになっていた。

 

SNS上で「#M市民の夢」がバズったのもこの頃のことだ。

 

全てが変わるー。

 

しかしそんなM市民たちの期待は、ある日突然終焉を迎えることになった。

 

甘井が突然辞意を表明し、市長を退くと同時に、チョコレー党の代表をも降りることを宣言したのだ。

 

会見に詰めかけた大勢の記者を前に、甘井はその重たい口を開いた。

 

「このたびは、突然の発表で誠に申し訳ありません」

 

「しかし私は、皆様に、そして私の仲間たちに、大きな嘘を付いていました」

 

「大きな嘘を付いたまま、皆様を騙したまま、政治活動を続けていくことは出来ないと考えた次第です」

 

「私にチョコレー党の党首はふさわしくありません」

 

「なぜなら私は、本当は・・・」

 

 

 

「こしあんが一番好きだからです」

 

「その中でも一番好きなのは、一六タルトです。カステラだけを先に食べてしまい、残ったこしあんだけを一口でいただく。最高の贅沢です・・・」

 

かくしてチョコレー党は「こしあん党」へと党名を変更し、さらなる甘い未来へとその政治活動を続けたとか続けなかったとか。

とっぴんぱらりの、ぷう。

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