改元で考える「虚構」の力と上手な付き合い方【3000文字チャレンジ】

タイトル画像

この記事は、こぼりたつやさんが主催する#3000文字チャレンジ「平成」の記事です。

3000文字チャレンジ平成とは?
・このテーマで3000文字以上
『平成』さえ絡んでいれば、どんな文章でもOK!

・画像、動画及び文字装飾禁止!
無機質な活字のみ。無機質に命を吹き込もう!

そして今回はこぼりたつやさんが主催者としての最後の3000文字チャレンジとなります。

尽力をいただいた主催者の方へのお礼として、最後は自分自身の根本的なテーマを含めて書くことにしました。

それは世の中に溢れている「虚構」についてです。

平成から令和へと改元されるこの機会を捉えて、「元号とはそもそも虚構に過ぎない」という物の見方を提示させていただきます。

少し長くなりますが、良かったら最後までお付き合いください。

それでは「#3000文字平成」を始めさせていただきます!

はじめに

平成が終わりますね。

あともう少し、正確には平成31年4月30日の翌日に、元号が平成から令和に改められることが決定されています。

テレビでは平成を振り返る番組が盛んに放送され、「令和まであと◯◯日◯◯時間◯◯分」というカウントダウンを流し、改元ムードを煽っています(便乗かも?)。

これらの影響を受けてかどうかは分かりませんが、

「平成が終わるなー」
「いよいよ令和が始まるなー」

というように、何かが終わり、何かが始まるように感じている方も多いのではと思います。

でもですね、騙されたら駄目です。
それらは全て虚構なんですよ。

平成も令和も、改元も、終わるとか始まるとか感じてることもぜーーーんぶ虚構です。実在しません。

幻想です。幻なんですよ。

えっ?大丈夫ですよ。
僕は錯乱していませんし、酔っ払ってもいません。

というわけでこの記事では、元号が虚構である理由をお話しさせていただき、ついでに、虚構が力を持つ理由や、虚構との上手な付き合い方についても触れていきます。
良かったらお付き合いください。

元号は虚構だけど確かに存在する

「虚構」って何?

大辞林では、虚構について次のように書かれています。

******

①事実でないことを事実らしく作り上げること。また、作り上げられたもの。作りごと。

②文芸作品を書くにあたって、作者の想像力により、実際にはないことを現実にあったことのように真実味をもたせて書くこと。また、その作品。仮構。フィクション。

******

ニュアンスは「実際にはなかったが、作り上げられた出来事」ということですね。

これを踏まえて、この記事では『虚構』という言葉を「世界に実在していないもの」という意味で使っていきます。

実在しないもの。
目で見ることも、手で触ることも出来ないもの。
これを虚構という言葉で表現します。

元号は虚構

さて。話を元号に戻しましょう。
元号って触れますか?
見ることができますか?

勿論、答えは「出来ない」です。なぜなら世界に元号なんていうものは元々実在してなくて、人間の想像上で作られたものでしかないからです。

だから元号は虚構です。

しかし、虚構でありながら、僕たちが生きている社会には間違いなく存在しているのが元号です。

書類に日付を書くときには平成31年4月◯◯日と書くし、多くの日本人が今を「平成」という時代だと感じます。

それは、元号が実在しているもののように僕たちの中で認識されているからです。僕たちの肌感覚では、元号は存在しているんです。

元号は信用によって作られ、存在している

元号のほかにも、例えばお金、国や法律なども実在はしていないので『虚構』だと言えるでしょう。しかし、僕たちはこれらのものが実際に世界に存在しているように肌感覚で感じています。

なぜ肌感覚で存在するように感じるかというと、これは僕たちホモ・サピエンスの種としての能力によるものだと考えられています。

虚構を実在のものとして認識する能力を、生物種の固有能力として持っているんですね。

目に見えず、聞こえず、臭わず、触れることが出来ないのに「実際にある」と感じられる能力。

ホモ・サピエンスが他の種に対して圧倒的な強さを誇った原因の一つとも考えられているそうです。

「実際にある」という認識は、存在を信用することで作られます。

つまり「元号というものがあって、今はそれが平成だ」だと信用すれば、自分の中に元号という虚構が存在することになるんですね。

そして同じく、今の元号が平成だと信用し、次の元号が令和だと信じることで、「平成」「令和」という時代が誕生します。

だから僕たちの認識の中では、元号も、平成も令和も、確かに存在していると言えます。

元号の意味や力って?

とこほで元号って何なのでしょう?
どうして僕たちは虚構に過ぎない元号の存在を、僕たちは当たり前のように受け入れているのでしょうか。

社会学的な話は専門外ですが、大雑把にいうと次のようなことが理由だと言えるでしょう。

・「時代」を認識することができる
・年月日を記述する道具になる
・日本人であるという感覚を持てる
・伝統であり、文化的な価値がある
・そもそも、あるのが当たり前

また、日本国の行政機関は、元号の存在を前提として動いています。

これって凄い。
元号は虚構でありながら、個人レベルだけでなく、社会に対して影響力を与える意味や力を持っているんです。

どうして虚構である元号が、そこまでの意味や力を持つのでしょうか?

そこでまず、元号の正体を整理しておきたいと思います。

元号の正体は何なのか

元号とは何か?

日本の元号は「元号法」という法律が根拠になっています。

******

法律第四十三号(昭五四・六・一二)
◎元号法
1 元号は、政令で定める。
2 元号は、皇位の継承があつた場合に限り改める。
附 則
1 この法律は、公布の日から施行する。
2 昭和の元号は、本則第一項の規定に基づき定められたものとする。
(内閣総理大臣署名)

******

シンプルな法律です。平成とか令和とかいう文字は書かれていません。

「元号は政令というもので実際には決めますよ。皇位の継承があった場合だけ改めますよ」

とだけ決めたものです。

では、この政令って何なのでしょうか?
平成を決めた政令を見てみましょう。

******

昭和六十四年政令第一号
元号を改める政令
内閣は、元号法(昭和五十四年法律第四十三号)第一項の規定に基づき、この政令を制定する。
元号を平成に改める。
附 則
この政令は、公布の日の翌日から施行する。

******

この文中の「元号を平成に改める」、これが平成の正体なんですね。

ちなみに令和については、次の政令で定められています。

******

平成三十一年百四十三号
内閣は、元号法(昭和五十四年法律第四十三号)第一項の規定に基づき、この政令を制定する。
元号を令和に改める。
附 則
この政令は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法(平成二十九年法律第六十三号)の施行の日(平成三十一年四月三十日)の翌日から施行する。

******

やはり文中の「元号を令和に改める」、これが令和の正体です。

結局どういうことなの?

元号法は法律です。
法律は、国会で成立します。国会で議決するのは国会議員です。

政令は、行政機関である内閣が制定する命令です。内閣は国会議員が選んだ総理大臣が組織します。

そして国会議員は日本国民が選挙で選ぶので、メチャクチャざっくりいうと、

日本の国民が選んだ代表が「元号として呼ぶことにしようよ」と話し合って決めたものが元号

だということになります。

実際には様々な手続きがありますのが、根本的な考え方としては変わりはないはずです。

つまり、元号の正体をものすごく簡単に言うとこうです。

「これを元号と呼ぼうねとみんなで話し合った決まりごと」

そう。あくまで「決まりごと」に過ぎないんです。

社会上間違いなく存在していますが、実在はしていない虚構ということがお分かりいただけると思います。

ではこの正体を踏まえて、元号が力を持つ理由を考えます。

決まりごとでしかない元号が力を持つ理由

その理由について、僕は思い切って単純化して、大きく次の3つだと考えています。

・国が法に基づき定めたから
・名前があることで認知しやすくなるから
・自分以外の大勢も信じているから

一つずつ説明していきます。

ポイント1:国が法に基づき定めたから

一つは、国が法に基づき定めたからです。

憲法→法律→政令という一連の流れの中で決定した事項は、国としての決まりごとです。

国というものは、法体系という決まりごとによって動きます。つまり新しい元号を国が決めれば、国とそこで生活する人間は皆、それに従って動くことになるわけです。

普段の生活を支えているインフラや治安なども、国の決まりごとを前提として成り立っています。そういった便利なものは利用するけど、元号なんて気に入らない決まりごとは守らないという勝手は社会では通用しません。

当たり前ではありますが、「国が決めたこと」という事実が、元号が大きな力を持つ理由の一つです。

ポイント2:名前があることで認知しやすくなるから

一つは、人間の認知能力の特性です。

人間は”名前”を持つものを認識しやすいという特性があります。名前という「タグ」を付けることで、物事をざっくりと把握する(または把握したつもりになる)ことができます。

「1988年1月から2019年4月までの間」というよりも、「平成」と呼ぶ方が認識しやすいんです。

元号が持つ「名前」としての特性が、人間の認知能力に受け入れやすいんですね。認知されるイコール、その人間が認識する世界には存在するものになります。

だから、人間に認知されやすい「名前」を持っていることが、元号が力もつ理由の一つと言えます。

ポイント3:自分以外の大勢も信じているから

最終的には、これがトドメです。
自分以外の大勢も信じているからです。

国が決まりごととして決め、
名前を持って認知されることで、
自分以外の大勢の人間に「その元号が存在すること」が認識されます。

今だと、日本国民のほとんどや、ニュースを見た世界の人々も「日本の次の元号は令和だ」と受け止めています。

映像や文字で見ただですが、「令和」という新しい時代の存在を信じている状態です。テレビやネットなどのメディアでは皆が

「新しい時代が来るぞ!」
「平成を振り返ろう!」

とはやし立て、時代が変わるムードを作り上げていきます。

その中にいると不思議なことに、知らない内に肌感覚で「時代は平成から令和に変わるんだ」と感じるようになります。

なぜなら、自分以外の大勢が信じていることを自分も信じることで、一体感という強烈な快感を覚えるからです。

こうなると、個人の認識のなかに「元号」というものが完全に存在するようになり、行動にも影響を与えます。

一番大きな理由ではないだろうかと、僕は考えています。

虚構との上手な付き合い方

ここまで元号について「虚構」「決まりごとでしかない」と論じてきましたが、それは元号を軽んじるとか、否定するとか、そういうことではありません。

僕たちがより楽しく生きていくために「虚構である元号が実際に存在するように感じる作用」を上手く使って行こうということが、僕が伝えたいことです。

つまり、元号というものと上手に付き合っていこうよという話です。

そのための方法を3つ整理しました。

虚構であることを認識する

まず、元号が虚構であることを認識します。

元号の成り立ちを把握し、本来の性質=虚構であることを認識しましょう。

相手を知ることが、上手に付き合うための第一歩です。

正体を知らないと妖怪やお化けのような存在となり、自分が影響を受けてもその理由が分かりませんし、上手く付き合うことも来ません。

共通認識、記号として使う

その他大勢の人との意思疎通のための道具、記号として使うという使い方です。

日本ではまだまだ元号を使った和暦を用いることが多いので、日時を伝える時の共通言語として使う機会が多いです。

また、時代を表す記号としても使われますので、区切りとして使うと便利です。
(平成ライダーなど)

ただ、不用意に使い過ぎると「平成生まれ」という様な何の根拠もない概念を作り出して思考を硬直させる弊害もあるので、そこは気をつけたいです。

自分の行動や意志の強化に使う

僕が一番おすすめしたい使い方です。

個人の好き嫌いには関わらずにこの日本では元号は使用され、否が応でも耳に入り、そこに生きる僕たちは少なからず影響を受けることになります。

それなら。

元号という虚構を、自分自身を前に進めるきっかけとして使ってしまえば良いと思うのです。

例えば、時代の区切りを自分の区切りとして意識付けする。
平成という時代を振り返り、新しい令和という時代をどう生きていくかを考え、次の行動に繋げていくことが出来ます。

ありふれた行動のように思えますが、ただ何となく「平成から令和に変わるから~」ということとは違います。

これだと本当に周囲に流されていたり、あるいは、浮ついた状態で考えることになっていたりして、何かを考えついたとしても、その後で実際に行動に移すことは難しくなるでしょう。

しかし、僕がここでおすすめする使い方は、元号が虚構であり、その虚構にどういう働きがあるのかを理解したうえで、自分が主体となって虚構を活用する方法です。

自分の行動や意思が先にあり、あくまでその強化として元号という虚構を使うのです。追い風に乗るようなイメージが近いかもしれません。

もし風が吹かなくても、行動や意思が既にある訳ですから、風を上手に受けることができればぐっと前に進む事ができるはずです。

新しい時代が来るという感覚を虚構と知りつつ、それを肌でしっかりと感じて力に変え、自分自身を加速させる。

数少ないこのチャンスを捉え、ぜひ活用してください。

まとめ

少々論が長くなってしまいました。

改元という滅多にない事態を経験している今は、物事の虚構に気付く絶好のチャンスです。しかし社会にいくつも存在している虚構は実際に大きな力を持ち、影響を与えてきます。

その正体をしっかりと見極め、逆に、自分の力になるように利用していくことが大事です。

ぜひ元号という虚構の正体を見極めて、自分自身を新しい時代へと進める力として利用してください。

皆で、新しい時代へ足跡を残しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です