こんにちは、霧島もとみです。
3000文字チャレンジは2年目の新しいスタートに突入し、最初のお題「ハンバーグ」を踏襲した「ステーキ」が今回のお題です。
3000文字チャレンジ!第53弾!【ステーキ】
どうも!
3000文字チャレンジ。
さぁ、いくよ!
2周目!今回のテーマは『ステーキ』です!
以下のルール見てね↓↓↓↓↓
— 3000文字チャレンジ公式アカウント (@challenge_3000) December 5, 2019
そんな記念すべきお題「ステーキ」ですが、そういえば自分自身が入院生活を1ヶ月ほど送っていることもあり、退院したら食べたいものって何かな…と考えたときに思い浮かんだ一つが「ステーキ」でした。
そんなステーキに賭ける思いを、そこはかとなく書いてみることにします。
ちなみに今回のお題の第2弾です。
思いついてしまったが最後、書かずにいられなくなり勢いで書いてしまいました。
時間を無駄にしてもいいよという方は、ぜひご覧ください。
退院したらステーキを食べに行きたい男・その2
入院生活を始めてから1ヶ月が過ぎました。
退院の目処が見えてきたところで、退院したら何がしたいかな…と考えてみたところ、
美味しいものが食べたい。
が割と大きいです。
病院食も普通に美味しくて助かってはいますが、やはり健康的なあっさりした食事になっているので、ドカ!というものが食べたいなーと思っちゃいます。
そこで…
「やあどうも、お見舞いに来ましたよ」
…えっ、恭也さん?こんにちは。
「もうそろそろ退院が近くなったって聞いたんで、様子を見に来たんだよ。調子はどう?」
…はい。良くはなってきてると思いますが、まだ退院は決まらないのでボチボチってところですね。
「そっか。あとひと踏ん張り、頑張って治療しないとな」
…そうですね。
「ところで退院したら、何かしたいこととかある?」
…したいこと?そうですね、ずっと病院食ばっかり食べてたので、何か美味しいものをドカッと食べてみたいとかですかね。
「なるほどなあ。例えば、どんなものが食べたいとかある?」
…食べたいものですか。色々ありますけど、例えばステーキとかですかね。
「ス、ステーキ?」
…どうしたんですか?急に大きな声を出して。
「いや、お前が急にステーキなんて言うから、びっくりしてさあ」
…別に驚くことじゃないと思いますけど。
「そっか、ステーキか…」
…あの、何か?
「うん。その気持ち分かるよ。お前の気持ち、よくわかるよ」
…えっ、何が?
「他のどんな食べ物よりもステーキを食べたいっていうその気持ち。痛いくらい良く分かる」
…そこまでは言ってないですけど。
「実は俺もな、かつて、ステーキが心に刺さっていた男の一人なんだ」
…刺さっていた…?
「あれは小学校3年生の頃だったっけな…。俺は3人兄弟の長男坊で、家はそんなに裕福じゃなかった。いや、今思えば貧しいくらいだったのかもしれない。でも父さんも母さんも優しかったし、兄弟は喧嘩もするけど仲良しで、モノはなくても楽しい家庭だった」
…いきなり身の上話始めたけど…。
「まだまだ昭和真っ盛りの、そんな時代のことさ」
…そうですか。
「ある日さあ、学校で『一番美味いものが何か』って話になったんだ。俺は考えたね。毎日食べてるものから、アレかなあ、コレかなあって。ヨダレ出しながら考えた」
…き、汚い。
「小学生だからヨダレくらい出すだろ?で、あっ!と思いついたのがロールキャベツだったんだ」
…へえ、美味しそうじゃないですか。
「ケチャップをかけたロールキャベツ。酸味とキャベツの甘味、それにミンチの旨みが合わさった味は子供にとってそりゃあ格別だったんだ。それに滅多に食べられない嬉しさもあった。年に2回くらいしか作ってくれなかったからな。いや、当時の家の状況なら、それくらいの頻度でしか作れなかったんだろう」
…結構厳しかったんですね。
「子供の想像力なんて儚いものさ。他の家も大体似たようなもんだと思ってたんだ。だからこれは共感されるぞ!と思って言おうとしたんだ。『俺はロールキャベツが美味しいと思う』ってさ」
…なるほど。
「ところが俺が言おうとしたその瞬間、ケンジって奴がこう言ったんだよ。『やっぱり美味いのはステーキだろ!』ってね」
…はあ。
「クラスの雰囲気は一瞬にして奴にもってかれた。ケンジはステーキの美味しさって奴を実に上手に話したよ。奴は病院の息子だったから、よく食べてたんだろう。厚みがとか、柔らかさがとか、肉汁がとか…クラスの奴は完全に引きこまれてた」
…なるほど。
「で、ケンジは俺に聞いてきやがったんだ!『お前もステーキが美味いって思うだろ?』って」
…で、なんて返したんですか?
「だが俺は!まだ子供だった俺は!ステーキってものをその時知らなかったんだよ!見たことがなければ聞いたこともなかったんだ!」
…えっ、そうだったんですか。
「でもそんなこと言えない。そんな事、その場の雰囲気が許してくれない。まさかステーキのことを知らないなんて神も仏も見逃しちゃあくれない空気さ。ハッ!俺はそれがバレないようにと必死で、『うん、やっぱりステーキだよね』としか言うことが出来なかったんだよ」
…よくある事な気もしますけど。
「それからは気が付けばステーキのことばかり考えてた。親には聞けなかった。子供心に、何か傷付けてしまうような気がして怖くて聞けなかったんだ。今みたいにネットもない時代さ。俺がどうしたと思う?」
…いや、分かんないです。
「辞書だよ!辞書を引いたらこう書いてあった。『厚めに肉を切って焼いた料理。特にビーフーステーキのこと。』」
…じ、辞書って…。
「基本だろ!小学生だからな!でも分からない。厚めってどれくらいだよ?ただの焼いた肉がそんなに美味いのか?かろうじてビーフが牛ってことは分かったけど、それだけだった」
…まあ、それ以外に言いようないですけど。
「ますますステーキは俺の心を捉えて離さなかった。俺はまだ見ぬステーキのことばかり考えて、気が付けば肉という肉がみんなステーキに思えてきた」
…やばいやばい。
「街行く人も、みんなステーキさ!早く食べたい、その肉を!そんな状態だったんだ」
…完全に危ない奴じゃないですか。
「そしたらそんな時さ。急転直下にその日が訪れた。外食なんてしたことがなかった親が、急にファミリーレストランに行くって言い出したんだ」
…えっ、良かったじゃないですか。
「そしたらあったよ。メニューにステーキが。俺は初めて目にするヴィジュアルにすっかり心を奪われて、それこそ舐めるようにメニューを見ていた。ていうか実際に舐めていた」
…き、汚い。
「で、親は言ってくれたよ。『何でもいいから食べたいものを頼め』って。キタコレ!と思ったよ」
…良かったじゃないですか。
「だけどさ…そうは言いながら…親父の奴も、母ちゃんも…なぜか一番安いメニューを頼もうとするんだよ。サラダも付けやしない。一方ステーキは一番安いのでも1000円は下らない高嶺の花さ」
…で、どうしたんですか?
「俺は葛藤したよ。子供のために遠慮する親の気持ちが痛いほど分かったし、でもそれに甘えて自分だけ高いものを頼むのは違う気がするし…。そしてそんなことで悩んでる姿を見せると逆に気を遣わせそうな気がしたし…」
…考え過ぎじゃあ…。
「結局俺が頼んだのは、ハンバーグだった!ちょっとだけ高くて、子供が喜びそうなもの。妥協のハンバーグさ!笑ってくれよ!そんな俺の零した涙がトッピングされたハンバーグは、美味かったさ…」
…良かったですね…。
「それから俺は大人になった。そしてステーキも食べたよ。でも、どんなにステーキを食べても、俺の心の中のステーキには届かなかった」
…どういうことですか?
「ステーキに対する思いが強すぎたんだろう。こんな味のはずじゃない、もっと厚くて美味しいはずだ…。心の中に理想のステーキがどっかりと居座って、俺が食べるステーキをステーキだと認めちゃくれなかったんだ」
…そ、そうですか。
「それからというもの、俺はすっかり荒れちまった。ステーキで満たされない心を埋めようとして、いろんな悪さをやったよ」
…ええ?意味分かんない。
「酒にギャンブル、占いにスノボー」
…スノボー?
「ステーキを紛らわすため、行きずりの女とも寝たよ!」
…なぜ!?
「何かを変えようと思ってインドにも行った」
…インド?
「でもインドでも俺のステーキは見つからなかったし、何なら酷い仕打ちを受けそうになったよ!」
…えっ?
「ヒンドゥー教では牛は聖なる生き物だったからな」
…なるほど。
「それからもあちこち探した。地元で、東京で、知らない土地で…。船頭さんにお願いして漁船にも乗せてもらった」
…なんで漁船に…。
「ひょっとしたら、海にあるんじゃないかと思ってな」
…いや、ないでしょ。
「そう、無かったよ。いくらステーキ!って叫んでも釣れるのはアジばっかりさ」
…海ですからね。
「あんまりたくさん釣れたんで船頭さんにプレゼントしたよ。そしたら家に招待してくれた。そして俺の様子を見かねたのか、何でも話してみろって言ってくれたんだ」
…優しい人だったんですね。
「俺の荒れた心にその優しさは染みすぎた。俺は、無防備に心を開いてしまったんだ。そして言った」
…何て言ったんですか?
「ステーキが食べたいです…」
…それを聞いた漁師さんはなんて?
「にこっと笑ってこう言った。『諦めたらそこで、ステーキ終了だよ』」
…漁師がスラムダンク!てか、ステーキ終了の意味が分かりませんよ。
「それから俺はもう一度ステーキに向きあうことを決めた。もう逃げない。媚びない。省みない!いつか理想のステーキにたどり着くその日まで!」
…そ、それは良かったですね。
「だから俺、分かるんだよ!」
…えっ、何がですか?
「退院したらステーキを食べたいっていう、お前の燃えるような情熱が!」
…いや、そんなの無いですけど。
「心に刺さった俺だから分かるんだよ!お前の気持ちが分かるのは俺だけなんだよ!」
…分からん分からん。
「もう大丈夫。今日から俺がお前のステーキになるから!ほら手を貸して。さあ、俺のリブに心のナイフを入れてみろ!」
…何すんの?やめて!
「おう!ステーキーー!ステーキーー!肉汁がほとばしるーー!!」
…ヤバイヤバイ!
「病院中に聞こえるように!ステーキーー!!」
…迷惑だからやめてー!!てか、いい加減にしてください!!
「よし!今度は交代だ!お前が俺のステーキに…」
…なるわけないでしょ!
やめさしてもらうわ!!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
なおこの話は、チュートリアルの漫才をイメージしながら書きました。
徳井義実さんの早い復帰を心から願っています。
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