霧島もとみです。
インフルエンサーといわれる方々の中に、いわゆる煽りコメントを発信する人たちがいます。
例えばこんな感じの煽りです。
- サラリーマンはオワコン
- 公務員はオワコン
- 運転手はオワコン
- 大学は意味ない
- 童貞をいじる
こういうのを目にすると正直イラっとします。
はあ?何言ってんのこの人?
そんなことあなたに言われたくねーよ。
と思っちゃいますよね。条件反射的に「それは違う!」と反論したくなることもあったのですが、近ごろはイライラや反論願望が少しずつ消えていきました。
それは、ある仮説がとても腑に落ちたからです。
その仮説が何かというと、
「彼らは目的があって情報発信しているのであり、その情報発信対象は煽りにイライラする人々ではない」
という仮説です。
こう考えると、私たちが彼らの煽りにイライラすることは全く噛み合わない行為であり、意味が無いことが分かります。そもそも気にする必要すら無くなります。
ということで煽るインフルエンサーは相手にしなくてヨシ!な理由を整理してみました。
情報発信は目的を達成するための手段である
そもそも彼らはなぜ煽りを発信するのでしょうか?これを紐解く助けになる本が「ドキュメント戦争広告代理店」です。
1990年代のボスニア紛争で繰り広げられたPR戦争を取材して書かれた本で、非常に面白い一冊でした。この本で一番痛感したことが、「目的を達成するための一つの手段が情報戦」だということでした。
まず最初に目的があり、それを達成するために情報発信をするという構図です。
これを踏まえてインフルエンサーの煽りを考えると見方が変わります。
「なぜ彼らは煽りコメントを行うのだろう?その目的は何だろうか?」
イラっとする感情はいったん置いておき、背後にある目的を考えてみることにしました。
【書評】高木徹「ドキュメント戦争広告代理店」メディア、世論、 政府を情報で動かせ。
インフルエンサーの目的は何か?
インフルエンサーという行為で収入を得ていると仮定すると、おのずとその目的が推定できます。
「インフルエンサーとしての収入を維持・増やすこと」
彼らの行動原理は、社会を良くしたいとか、議論をして正解を探したいとか、そういうことではありません。それだと発言内容や行動との整合性が取れませんからね。
彼らが行動するのは、基本的には自分に利益があることだけです。それ以外の行為は時間の無駄で、何らの生産性もないため、行動意欲が湧かないでしょう。
ではなぜ煽りコメントが収入の維持・増加につながるのか?
「完全教祖マニュアル」という本がその構造を非常に分かりやすく解説しているので、少し紹介させていただきます。
誰でも教祖になれるマニュアルというぶっとんだ本で、宗教というものを思いっきり客観視・極端化して、その特性を面白く紹介しながら実はかなり核心を付いているなあ…と考えさせられる一冊です。
今の社会の基準で幸せになれない人は一定数存在する。幸せになれない人に違う価値観を与えて幸せにする。それが教祖の役割です、というのが「完全教祖マニュアル」の基本的な価値観です。
そして、このような事が書かれています。
宗教の役割は社会に迎合することではなく、むしろ、社会通念に逆らってでも、正しいと信じることを主張することなのだと考えてください。
あなたのすべきことは、①社会の基準で幸せになれない人を見つける、②反社会的な基準を与えてその人を幸せにする、ことだと考えて下さい。
いかにして他教団との獲得競争を制するかですが、ここで他教団との違いを明確にするためにも他教の悪口を言うことが大切になってきます。
宗教=商売だと読み替えると、何かズドンと嵌るなあ…と感じますね。
さて、代表的な煽りを見てみましょう。
- サラリーマンはオワコン
- 公務員はオワコン
- 運転手はオワコン
- 大学は意味ない
- 童貞をいじる
煽りの対象は社会で一般的になっている層だということが分かります。そして当然に、その中には幸せな人もいれば不幸せだと感じている人もいます。そうすると煽るという行為は、「社会の基準で幸せになれない人を見つける」行為だといえるでしょう。
また、「○○はオワコン」というメッセージは、「反社会的な基準を与えてその人を幸せにする行為」だといえます。あ、ちなみに反社会的な基準というのは、この場合は「○○」の社会(層)にそぐわない考え方・基準という意味であって、いわゆる「反社」と言われるものではないのでご留意ください。
そうするとどうなるか。
「社会の基準で幸せになれない人」が「自分が幸せになれる基準」を与えられるという希望を持ち、その発信者のもとに入信することが期待できる訳です。
また、悪口を言うことは「他教団との獲得競争を制することにつながる」ため、一挙両得ですね。
つまり煽るという行為は「インフルエンサーとしての収入を維持・増やすこと」が目的になるわけです。
煽っている対象は誰か?
例えば「サラリーマンはオワコン」という煽りです。最初はサラリーマン全体を煽った、つまりサラリーマンに喧嘩を売ったコメントだと考えていましたが、違いました。
先ほど整理した目的を前提とすると、煽っている対象はそのサラリーマン層(またはその候補者)の中にいる「幸せになれない人」です。
彼らが感じている不幸を浮かび上がらせ、自分の商売に取り込むために煽っているからです。
それ以外の大多数のサラリーマン層がどう感じようが、全く関係ありません。その層へのアプローチは何も目的がないからです。自分の商売に関係ありませんから、どんなに反感を買おうが、無視されようが影響なしです。喧嘩を買ってやるぜという人がいたとしても即ブロックで無視です。
だから例え煽りに腹が立ったとしても、関わるだけ無駄です。
そもそも腹が立つ必要もありません。彼らが煽りたいのは「不幸を感じている人」であり、他教団との獲得競争を制したいのであり、自教団内の結束を高めたくてやっているのですから。
「サラリーマンをディスる」そのものが目的でない以上、そこに反応しても噛み合うことはなく、不毛な時間と神経を消耗するだけです。
ああ、また、不幸な人を探しているんだなあ。って思います。
そんな事案に関わるのはそれこそ本当に時間の無駄ですよね。
そうは言っても腹が立つんですけど?
とはいえ、そうは言っても反射的に腹が立ちます。
これはしょうがありません。
自分が属している層を攻撃されると、防衛意識が反射的に働くからです。これは、かつて自分が属していた層であったり、知っている人が属している層にも同様の心理が働きます。
例えば「○○県」に住んでいて、「○○県ってダサいよね」と言われたら腹が立ちませんか?これは「○○県」に住んでいる=属しているという意識があり、「○○県」を攻撃される=自分が攻撃されるという心理が働くからです。
そして彼らがディスるのは、多くの人が属しているであろうマスな層です。
当然その層に何らかの関りを持っている人が多く、その結果、多くの人がイラっとする現象が起きてしまいます。
なぜマスな層をディスるのか?
その理由は簡単で、
ディスる層が大きければ大きいほど、相対的に見込み客の数も多くなるからです。
そういう理屈だとすれば、イラっとするのは彼らの流れ弾のようなものなので、一切気にする必要はないという事ですね。
というか彼らの目的のために、一切関係ない人たちが「イラッ」とすることは全く無意味であり、かつ誰も幸せにならない行為なので、スルーすることが適当な対応だと言えるでしょう。
スルーするのが難しいという方は、「反応しない練習」という本を読むと参考になるかもしれません。
煽るインフルエンサーは相手にしなくてヨシ!
ということで、以上のことから「煽るインフルエンサーは相手にしなくてヨシ!」という仮説が導けました。
- 彼らの煽りは情報発信であり、目的がある。
- 目的は新規顧客の獲得、既存顧客の囲い込み
- 情報発信対象は煽る対象層の中にいる「幸福でないと感じる人々」と「既存顧客」
- なので煽り対象層の大多数は対象にしていない
- イラッとするだけ無駄
- 議論を求めてないので反論は意味が無い
この記事で紹介した「完全教祖マニュアル」を読むと、SNSで繰り広げられるマウンティング合戦の背景が見えてきて面白いです。
ということで煽るインフルエンサーを気にすることなく、楽しいSNSライフを送りましょう!