こんにちは、霧島もとみです。
麻野耕司さんの「THE TEAM 5つの法則」を紹介させていただきます。
麻野耕司さんは㈱リンクアンドモチベーション取締役で、組織変革を手掛けている方です。
先日、著書の「すべての組織は変えられる〜好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか」を読み、
「これは面白い!」
と書評記事を書きました。
そうしたら自然と次の著書「THE TEAM 5つの法則」にはどんな事が書かれているのだろう?と興味が湧き、買って読んだ次第です。
基本的なエッセンスは前著「すべての組織は変えられる」を踏襲しながら、
著者が目指すチーム作りの戦術書だ。
という印象を持った本でした。
チーム作りに取り組む人間が、チーム員を含めてどういう思考を持つべきか?
どういう点に着眼して取り組みを行えばいいのか?
そのヒントを整理して、かつ出来るだけキャッチーに書かれています。
この本から得られたことや感想、前著との比較をまとめました。
感想と紹介:「THE TEAM 5つの法則」について
チームづくりに焦点を当て、大きくA・B・C・D・Eの5つで構成しています。
- A:Action 目標設定
- B:Boarding 人員選定
- C:Communication 意思疎通
- D:Decision 意思決定
- E:Engagement 共感想像
いかにもキャッチーにしてみました、という印象です。
でも実務レベルではシンプルであるほど覚えやすいので有り難いです。
それぞれの項目ごとに「法則→事例→チェックリスト」という順番で説明しています。また、図解が多めでビジュアル的な分かりやすさも工夫されています。
さて、本書の内容から前著「全ての組織は変えられる」にはなかった新しい要素で、これは!と思った点を2つ紹介します。
その1:チームの4つのタイプ
「B:Boarding 人員選定」の内容です。
チームには絶対解があるのではなく最適解があるという点をまず指摘した筆者は、チームには4つのタイプがあると説明します。
・柔道団体戦型
・駅伝型
・サッカー型
・野球型
この4つの型は、「環境の変化度合い」「人材の連携度合い」という2つの軸で分類します。
これを元にチームの流動性と固定性、多様性や均質性について考察を深めていきますが、共通するのは「チームに求められること、環境によって最適解が変わる」という点でした。
チームとはこうあるべき論ではなく、その時に求められるチームがどのタイプで、そのためにはどうマネジメントする必要があるかという視点です。
これを理解するのに、4つのチームという分類は身近でヴィジュアル的にも分かりやすい。例えば自分が組織で所属するチームを振り返ると、
・求められるのは野球型だ
・チームづくりのために何が必要か
ということが輪郭を持って見えてきた気がしました。
その2:コミュニケーションのためのルールづくり
「C:Communication 意思疎通」の内容です。
コミュニケーションコストを低減するためのルールづくりが必要という内容で、その設定を5つのポイントで整理しています。
・設定粒度(What)
・権限規定(Who)
・責任範囲(Where)
・評価対象(How)
・確認頻度(When)
ここにもキャッチーな工夫が。
これを先程の4つのチームのタイプごとに分析しています。
タイプごとに最適解が異なり、考えさせられます。
組織、ミニマムで言えば部署ごとに求められるチームのタイプが異なり、つまりチームの作り方・運営の仕方が異なるということを改めて突きつけられました。
前例踏襲、一律な考え方は通用しない。これを肝に命じたいです。
なおコミュニケーションの項目では「感情」が最終的には鍵になることが書かれており、相手への理解と心理的安全の必要性を説いていますが、この点は前著と共通です。
前著「すべての組織は変えられる」との違い
前著の「すべての組織は変えられる〜好調な企業はなぜ『ヒト』に投資するのか」は、
- 「何をやるか」ではなく「誰がやるか」で勝負が決まる時代であり、そこで勝つためには「ヒト」を獲得することが必要。
- そのためには労働市場で勝ち抜くことの重要性が高まっていて、そこに勝てる組織をどうすれば作れるのか。
を前提として組織づくりを論じた本でした。
この点は本書でも全く共通しています。
感情やモチベーション論、リーダーの決定論などは内容も同様です。
読み比べると2冊の違いは次の点でした。
- すべての組織は変えられる:組織づくりの戦略書
- THE TEAM:チームづくりの戦術書
組織づくりの重要性を戦略的に解説した本が前著で、その中で「チームづくり」に特化してより具体的な戦術を紹介した本が「THE TEAM」だと感じました。
また、「THE TEAM」ではその戦略と戦術の背景にある学術的(経済学・心理学)な根拠も紹介されていて、実務に活かそうとするときの裏付けとして後押しもしてくれます。これは、実際に自分が使う時に周囲への説明にも使えます。
その分、「THE TEAM」ではなぜ組織づくりが必要なのか、強いチームが必要なのかという戦略的な説明は大幅に省略されています。
なのでその点は「すべての組織は変えられる」で補強するともっと理解が深まるでしょう。
この点を踏まえると、「THE TEAM」はチーム作りに取り組もうとする人に、それを実行するためのツールを渡した本だと言えます。
- 他者へのコミュニケーションから始めるという思考。
- 思考の整理と、論理武装。
これを「THE TEAM」から受け取りました。
自分の組織について、チームについて考える力に出来るよう思考を深めます。
おすすめな1冊…ではなく2冊です。
「全ての組織は変えられる」の書評はこちらです。あわせてどうぞ。
【書評】ヒトで勝負が決まる時代に労働市場を勝ち抜く組織とは?「すべての組織は変えられる」麻野耕司